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2006年9月17日 (日)

デザイアと呼ばれた男  VOL 8

 こんにちは。D・二プルです。

 何でもいいので感想下さい。

          5

 深夜、俺は一人〝デザイア〟となり三宿病院に来ていた。

俺は駐車場から敷地内へ侵入し、非常階段を使って院内に入った。

非常口には鍵が掛かっていたが、俺は國無からもらった道具を使い、鍵を壊さずに開けた。

「ニガー」との戦いの合間に俺は國無からピッキングの技術を習っていた。

俺は鍵を鍵穴に差し込むタイプのものであればどんな鍵でも開けられるようになっていた。

 俺は誰もいない廊下をスタスタ進んでいった。

院内の見取り図は全て頭に叩き込んであった。

後は見回りの警備員や当直の看護士に気をつければいいだけだ。

以外にも俺は冷静だった。

これまでの経験が俺に自信をつけさせていた。

しかし、今日は油断できない。

今日はいつもと違い、國無のサポートは一切無い。

俺は國無にも黙って単独で今日ここに来ていた。

 「ワールド」でマユミから父 安久津の話を聞いた俺は居ても経ってもいられなくなった。

俺がマユミを救う。

今の俺の頭の中にはそれしかなかった。

勝算はあった。

安久津はあの日、俺を轢いたことを隠している。

それをネタに脅し、悪癖を直させる。

全ては國無が言っていた情報が頼りだった。

もし、この情報が嘘ならどうにもならない。

しかし、俺は國無の情報にある程度の信用を寄せていた。

國無は嘘の情報を使うほど安っぽくないように思えた。

あいつはもっと巨大な悪の根をもっているような気がした。

 俺は体を縮め、ナースステーションのカウンターの下を早足ですり抜けた。

ここをクリアしてしまえば後は病室が広がっているだけだ。

俺は暗視ゴーグルを付け、安久津を捜した。

安久津が今日、夜勤なのは分かっていた。

当直室を覗いてみたが安久津の姿はなかった。

仮眠室にもトイレにもシャワー室にもいなかった。

まさか、手術でもしてるんじゃないだろうな。

途方にくれて俺が廊下をあるいている時、妙な音が俺の耳に入ってきた。

それは聞き覚えのある音だった。

俺は耳を澄まし、音の出所を探った。

音はある個室の中から出ていた。

俺は静かにその個室のドアを開けた。

ドアを開けるとはっきりと音の正体が分かった。

それはベッドのきしむ音だった。

よく聞くときしみ音に混じって女のあえぎ声まで聞こえ始めた。

間違えなく誰かがヤッているのだ。

俺は身を屈め、音を殺しながら、ゆっくりとベッドに近づいていき、そっとカーテンの隙間から中を覗いた。

男は女に覆いかぶさっていて、俺からは後ろ姿しか見えなかった。

男は俺に気づかず激しく腰を動かしている。

女は目をつぶり、なるべく声がもれないように手で口を塞いでいる。

しかし、荒々しい男の攻めに耐え切れず口から音が漏れてしまっている。

その時、女が目を開き、俺と目が合ってしまった。

女は慌てて男に俺の存在を知らせようとしている。

異変に気づき、男が振り向いた。

その瞬間、俺は男の腹にパンチを叩き込んでいた。

俺は男の顔を見て唖然となった。

その男は安久津だったのだ。

安久津は俺に腹を殴られ、苦しそうに床に膝を付きもがいている。

俺はとっさに安久津の首筋に当身を喰らわせ気絶させた。

そして、女の口にクロロホルムが染み込んだハンカチを当て、眠らせた。

俺は床で失神している安久津を引きずり、病室を出た。

 俺は安久津を男子トイレに連れ込んだ。

安久津を引きずったまま個室に入って鍵を掛けた。

安久津を便器座らせ、ビニールテープで口を塞いだ。

そして、手錠を手足に掛け自由を奪った。

安久津はまだ意識を失っている。

俺は安久津の頬を叩き、意識を呼び戻した。

意識を取り戻した安久津は俺を見てギョッとなった。

しかし、手足の自由が奪われていることが分かるとあがくのをやめ大人しくなった。

「いいか、今から俺の質問に答えろ。YESなら一回、NOなら二回瞬きをしろ。分かったな」

安久津は不自然なほど大きく瞬きをした。

「俺が誰だか分かるか?」

安久津は瞬きを二回した。

「お前は数ヶ月前、ある男を車で撥ねたな。覚えてるか?」

安久津の表情が明らかに変わったのが分かった。

「どうなんだ。ひき逃げしたことを認めるのか?」

安久津は観念したように瞬きを一回した。

「よし、次の質問だ。お前は自分の娘がお前が裏でしていることを知っていることを知ってるのか?」

安久津は顔色を変え、瞬きを二回した。

俺はマユミの写真を取り出し、安久津の目の前に差し出した。

「いいか、もし、お前がこれ以上、悪癖を続けるようなら、娘の身に何が起きても責任は持てないぞ。それにお前がひき逃げをした証拠もそろってる。あれを世間に流せばお前の社会的地位も終わりだろうな」

安久津は目を見開いたまま瞬きしなかった。

「いいか、今日限りで女に手を出すことを辞めるんだ。でなければ……わかってるな」

安久津は瞬きを大きく一回した。

「それから、今日のことももちろん他言無用だ。いいな」

安久津が瞬きを一回した瞬間、俺は催眠スプレーンを吹きかけた。

 安久津が眠ったことを確認し、俺は手足に手錠とビニールテープを剥がし、その場を後にした。

 俺は予想以上にコトがうまくいったと思っていた。

しかし、それは大きな間違いだった。

 その時、俺は國無由自の力の大きさを感じた。

今までしてきた数々のことは、國無がいたからこそうまくいっていたのだ。

初めて単独で行動し、俺は自分の愚かさを知った。

まさか、こんな結果になるなんて……。

 安久津が病院の屋上から飛び降り自殺をしたのは、それから三日後のことだった。

                                                 【続く】

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