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2006年11月29日 (水)

デザイアと呼ばれた男  VOL 14

 こんにちは。D・二プルです。

 【二プルのおススメ映画】

  「リバティーン」

   『パイレーツ・オブ・カリビアン』や『チャーリーとチョコレート工場』のジョニー・デップが破天荒な放蕩詩人を演じた歴史ドラマ。『ある貴婦人の肖像』などの名優ジョン・マルコヴィッチが、人間味あふれる王役で登場。『CODE46』のサマンサ・モートンは舞台女優役で深みのある芝居を見せる。ここのところ家族向け作品に出演してきたデップが、本作では役者としての本領を大いに発揮。若くして散る運命の美しい男の狂気や色気を迫真の演技で見せる。

17世紀の英国。王(ジョン・マルコヴィッチ)に追放されたジョン・ウィルモット(ジョニー・デップ)は、3か月後に恩赦を受けてロンドンに戻ってくる。彼は悪友たちに自分がきわどい性描写にあふれた政府批判の詩を詠(よ)んで追放されたという武勇伝を聞かせるのだった。 (シネマトゥデイ)

製作年度 2004年
製作国・地域 イギリス
上映時間 110分
監督 ローレンス・ダンモア
製作総指揮 チェイス・ベイリースティーヴ・クリスチャンマーク・サミュエルソンピーター・サミュエルソンラルフ・カンプルイーズ・グッドシル
原作
脚本 スティーヴン・ジェフリーズ[脚本]
音楽 マイケル・ナイマン
出演もしくは声の出演 ジョニー・デップサマンサ・モートンジョン・マルコヴィッチロザムンド・パイクトム・ホランダージョニー・ヴェガスケリー・ライリージャック・ダヴェンポートリチャード・コイルフランチェスカ・アニスルパート・フレンドポール・リッタースタンリー・タウンゼント

 引き続き「デザイアと呼ばれた男」をお楽しみ下さい。

 

          3

 その日、俺は家から離れた二子玉川園の駅前にいた。

サングラスとニット帽は外していたが、全身黒ずくめの衣装を身に纏い、口の中にはボイスチェンジャードロップが転がっていた。

俺はガードレールに腰を下ろし、いかにも待ち合わせをしているようなそぶりで行き交う通行人の群れを見つめていた。

もちろん、俺の視線の先には美しい女たちしか映っていなかった。

時間は午後6時を少し過ぎたぐらいで、駅前には仕事を終えたOLや学校帰りの女子大生でにぎわっていた。

その中で俺は一人の女に目を付け、後を着けた。

俺は目を付けたのはスーツ姿のOL風の女で、背中まで伸びた綺麗な茶髪と大きく開いた胸元が印象的だった。

女は自宅に帰宅するつもりなのか、駅から人通りの少ない住宅街の方へ歩いて行った。

辺りには人影もなく、次第に暗くなってきている。

 俺はニット帽とサングラスを掛け、次第にターゲットとの距離を詰めていった。

國無との訓練でこの辺りに来ていたおかげで俺はこの周辺の地理が完全に頭に入っていた。

女の進む先には多摩川の土手とぶつかるT字路になっている。

俺はそこで行動に出た。

背後から女を羽交い絞めにし、口を押さえながら多摩川の土手に連れ込んだ。

そして、草むらの中に女を押し倒し、周囲から見えないポイントに叩き込んだ。

女はと突然の出来事に何が起きたのか分からないでパニックになっている。

俺はそんな女ゴム手袋をはめ、に容赦なく襲い掛かった。

女のシャツをボタンごと引き裂き、ブラを毟り取ると露になった胸をこねくり回した。

俺の手の中に女の体温と共にやわらかくねちねちした感触が伝わってくる。

その感触は俺の全身に伝わり、さらに興奮させた。

俺はそのまま胸を口で吸いながら、さらに女の下半身へと指を移動させていった。

俺の指は邪魔な布キレをみるみるうちに排除していった。

女はさらに抵抗してきたが、それはかえって俺の欲望を掻き立てた。

俺は女の陰毛を掻き分け、母なる洞窟へとたどり着いた。

俺は女を押さえつけたままヴァギナを舌で綺麗に掃除した。

女は激しく身体を揺らし拒否反応を示したが、俺は構わず作業を続けた。

女の身体が火照り始めた頃合いを見て、俺は女に挿入した。

この時点で女の抵抗は最高潮に達し、俺のエクスタシーもクライマックスへと突入していった。

俺は荒々しく機械的にピストン運動を続けた。

俺の股間に熱い感覚が訪れ、波がやってくるのが分かった。

次の瞬間、艶かしいゴムに包まれたペニスは白い生命の源を思う存分に吐き出した。

女は抵抗し疲れ、ぐったりとしている。

俺は女の上でひと時の休息をとり、すぐにペニスを抜いた。

 いつものように慣れた手つきでゴムを外し、すばやく回収する。

俺は草むらの中に横たわる女の手からゴム手袋を外した。

女は魂が抜けたようにすっかり絶望し、抜け殻同然になっていた。

俺はそんな女に微塵の罪悪感も感じず、その場を後にした。

 マユミと付き合い始めてから俺はずっとざらついた気持ちが続いていた。

マユミとは一緒にいると確かに楽しかったが、その反面辛くなった。

第一の原因はやはりマユミとのセックスがうまくいかないことにあった。

マユミを愛しているはずなのにその気持ちとはうらはらに〝性の不一致〟は続いた。

努力すればするほどそれはうまくいかなかった。

そして、マユミとの溝は次第に深まっていった。

 マユミはデートしている時でも、今まではプラスに感じられたマユミの魅力がマイナスに感じるようになった。

酔っ払ったマユミが男と乱闘騒ぎを起こしていた時、以前ならマユミを助ける為に相手の男と戦ったものだが、今は自分のストレス発散の為に相手に暴力を振るっている自分に気づいた。

俺の心は常にイライラし、その怒りを静める為に暴力とレイプに明け暮れた。

マユミとセックスしてもイカないのに、レイプだと必ず絶頂している自分にさらに嫌気がさしていた。

 これまで潜ってきた修羅場の数々と國無に習った技術のおかげで、俺は警察に捕まることもなく犯罪を重ねていった。

今思えばこの時点で警察に捕まって国が定めた刑に服していたほうがどれだけよかったのか分からない。

この時はもちろん警察に捕まりたいとは思っていなかったし、罪悪感もまるで感じていなかった。

しかしそれは当たり前のことだったのだ。

國無由自の作ったシナリオで俺が捕まるとなっていなかったからだ。

俺は自分の欲望に従って行動していると思っていたが、それは國無由自の掌の上で踊らされていただけだった。

國無がその気になれば俺を警察に逮捕させることも殺すことも簡単に出来たはずだ。

そうしなかったのはただ単におもしろくなかったからだった。

國無は俺が警察に捕まるより遥かに重い絶望を味合わせようとしていたのだ。

それによって生まれる常人には想像もできない〝何か〟を國無は表現しようとしていた。

それは狂人にしか考えつかない最悪のシナリオだった。

それは音も無く静かにしかも確実に俺に近づいてきていた。

そして数日後、それは現実のものとなって押し寄せた。

          4

 それはオフの日に掛かってきた小原からの突然の電話で始まった。

アカイが無断欠席をして連絡も取れないので、代わりにシフトに入れないかという内容だった。

 俺はマユミとの関係もうまくいかず、特にやることもなかったので「ワールド」に臨時で入った。

俺が店に行くと小原が一人で多くの客を前に悪戦苦闘していた。

俺はすぐにエプロンを付けカウンターに入り、行列を作っていた客をさばき、溜まっていた返却物を片付けた。

その間も小原は空いた時間にアカイの携帯に連絡を入れていたが一向につかまらなかった。

 この時は俺も小原も単にサボリだと思っていた。

しかし、小原がアカイの実家に電話を掛けたことで事態は一変した。

アカイは実家に母親と二人で暮らしているというのだが、母親の話では昨日秋葉原に買い物に行くといって出て行ったきり戻ってきていないというのだ。

携帯にも連絡が取れず、アカイは行方不明になっていた。

アカイの母親は警察に捜索願を出しに行ったが、警察は21の男が2,3日帰らなかったぐらいでまだ事件の可能性は低いと頭ごなしに決め付けまるで相手にしてくれなかったという。

そればかりか、必死に頼み込むアカイの母親を邪険にし、面倒くさそうに捜索願の書類に書き込み、「何か分かったら連絡します」と言って追い返したのだった。

 小原から話を聞いて俺はアカイの心配をしていたが、今回のアカイの失踪の原因が自分にあるとは夢にも思っていなかった。

 昨夜、アカイは一人で秋葉原にいた。

アカイがアキバに来たのはその日に限ったことではなく、毎週週末には遊びに来ていた。

いつものように電気街をぶらついて、メイド喫茶でお茶をして、アニメショップにより、フィギュアとDVDを買った。

そんなアカイの前に一人の男が現れた。

その男は一見アキバに相応しくない容姿をしていた。

身長180はある長身で、肩まで伸びた茶髪の髪は女のように綺麗でなめらかな艶を出していた。

シローと名乗るその男は突然アカイに声を掛けてきた。

初めはシローの容姿があまりにもアキバにいないタイプなので戸惑ったアカイだったが、話しているうちにすっかりシローと意気投合していた。

シローはアニメ全盛期時代のビデオを捜しているらしく、その外見からは想像できないほど根っからのアキバ系だった。

シローはアカイに色々質問し、一緒にアニメショップを何軒も回った。

アカイは思いがけずに出会った仲間に親近感を持ち、心の底から楽しんでいた。

 すっかり夜も更け、シローは今日アキバを案内してくれたお礼に家まで送ると言って、アカイを自分の車に乗せた。

アカイはすっかりシローを信用し、何の疑いも持たず車に乗り込んだ。

車内にはお香のような独特な香りが漂っていた。

 シローは運転席に座り、車を発信させた。

シローはアカイが聴いたことのない不思議な感覚の洋楽をかけた。

助手席でその音楽を聴いていたアカイは次第に睡魔に襲われてきた。

運転するシローには悪いと思いつつも、いつのまにか重い目蓋を閉じて眠ってしまった。

 そんなアカイを見て、運転席のシローは不敵な笑みを見せ、車を走らせた。

 次に気が付いた時、アカイは歯科医の診察室のイスの上に座っていた。

真っ白なその空間はどこからどう見ても普通の歯科医の診察室だった。

初めアカイは自分が寝ぼけているんじゃないかと思ったがそうではなかった。

アカイは実際に歯科医の診察室のイスの上に縛られていたのだった。

アカイは体を動かし、なんとか脱出できないか試みてみた。

しかし、両手、両足を皮の拘束具でしっかりと留められていてどうすることもできなかった。

 その時、診察室に一人の歯医者が入ってきた。

よく見るとその男は白衣に身を包んだシローだった。

「おい、これは何のマネだよ。早く解いてくれよ」

シローはアカイの質問には答えず、ポケットから一枚のチラシを取り出すと、アカイの目の前に突き出した。

「〝デザイア〟はどこにいる?」

「……でざいあ?何だよそれ……これは、前に『ワールド』にあったチラシじゃないか。俺が知るわけないだろ」

アカイの言葉を聞いてシローは突然、目の前のライトを点けた。

アカイは眩しくて目を細めた。

ライトの光によってアカイの視界は真っ白になりさえぎられた。

 次の瞬間、アカイは口の中に何かを詰め込まれた。

消毒液と金属の棒のような感触が口の中を支配し、アカイの口は開いたままの状態になっていた。

そして、次の瞬間アカイは口の中に激しい痛みを感じた。

シローはアカイの奥歯を一本抜いたのだった。

「隠しても痛い目を見るだけだぞ。〝デザイア〟はどこにいる?」

「じどぅわげねえだぁど(知るわけねえだろ)」

シローは顔色一つ変えずにアカイの前歯を抜いた。

おびただしい黒ずんだ血が歯茎から噴出し、アカイの胸元に流れ落ちた。

あまりの痛みでアカイは意識を失った。

 シローは慣れた手つきで、小さなビンの中に入った硫黄液に使っているガーゼをピンセットで一つまみしてアカイの鼻に近づけた。

その異臭でアカイは意識を取り戻した。

シローは抜いたばかりの傷口に薬品を塗りつけた。

再び激しい痛みがアカイを襲う。

激しい叫び声を上げるアカイに、シローは三本目の歯を抜いた。

アカイの反応を見て、シローにはアカイが〝デザイア〟の存在を知らないと核心していた。

しかし、シローはアカイの歯を抜き続けた。

もはやアカイが〝デザイア〟を知ろうが知るまいがどちらでもよかった。

他人の歯を抜く瞬間、シローは快楽を味わうのだった。

現にシローはアカイの歯を抜きながら勃起していた。

一本一本歯を抜くごとに全身に快感が走った。

苦痛で悶える患者の表情がたまらなく好きだった。

もし、アカイが女だったらシローは歯を抜きながらアカイを犯していただろう。

シローは自分の手でペニスを握り締め、激しくしごいた。

しごきながらアカイの歯を抜いた。

 アカイの歯を全て抜き終える頃、シローは絶頂し、抜いたばかりの歯の上にザーメンを振り掛けた。

そして、アカイはあまりの痛みによってショック死していた。

 アカイの死体を前にシローは抜いたばかりの歯を大切に拾い集め、ビンの中に収集した。

それを宝物のように大切に鞄の中に詰めると、面倒くさそうにアカイの死体の処理を始めた。

                                                 【続く】

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2006年11月24日 (金)

デザイアと呼ばれた男  VOL 13

  こんにちは。D・二プルです。

 【二プルのおススメ映画】

  「クイルズ」

  18世紀末のフランス。猥褻文書の罪でナポレオン体制下の警察に逮捕されたサド侯爵(ジェフリー・ラッシュ)は、シャラントンの精神病院に送られる。金の力で特別待遇を受ける彼は、広い部屋で執筆の自由を与えられていた。これは理事長を務める若き理想家ド・クルミエ神父(ホアキン・フェニックス)が、サドの治療になると信じて与えた特権であった。だが好奇心旺盛な小間使いマドレーヌ(ケイト・ウィンスレット)を通して、彼の文章は世に渡り闇出版されており、その事実を知ったクルミエは、ただちに筆記具を没収。するとサドの猛烈な反逆が始まり、あらゆる手段を使って小説を書こうとする。しかし、新しく院長に任命されたコラール博士(マイケル・ケイン)はサドに残酷な拷問を加え、厳しく弾圧していく。ついに裸で監禁されたサド。そんな彼の耳に、ドア越しに囁くマドレーヌの、あなたの物語を聞きたいという声が聞こえた。患者たちを通して、サドの語る物語を密かに聞き書きしていくマドレーヌ。だが、その物語に発情した患者たちが暴れ出し、火事が発生、そして患者の1人にマドレーヌが殺されてしまう。やがてサドは獄死。その後、コラールは金がもうかるからとサドの本を出版し、クルミエ神父は患者となって邪悪な真実の物語を書きはじめるのだった。

 

スキャンダラスなフランスの文学者、マルキ・ド・サドの晩年を描く作品。監督は「ライジング・サン」のフィリップ・カウフマン。脚本はダグ・ライト。撮影は「キャラクター 孤独な人の肖像」のロジェール・ストッファーズ。音楽は「リトル・ダンサー」のスティーヴン・ウォーベック。美術は「恋におちたシェイクスピア」のマーティン・チャイルズ。出演は「TATARI」のジェフリー・ラッシュ、「グッバイ・モロッコ」のケイト・ウィンスレット、「グラディエーター」のホアキン・フェニックス、「追撃者」のマイケル・ケインほか。2000年ナショナル・ボード・オブ・レビュー最優秀作品賞、最優秀助演男優賞ほか多数受賞。

 

 では、「デザイアと呼ばれた男」を引き続きお楽しみ下さい。

 

第六章  狂気の異常性愛者たち

          1

 マユミと付き合い始めてから一週間が経っていた。

俺とマユミは休みを合わせ、その日もデートしていた。

 待ち合わせ場所にやってきたマユミは、胸元が大きく開いた黒のシャツの上から白のジャケットをはおい、ジーパンにパンプスを履いたシンプルな姿で現れた。

チラチラと見え隠れするヘソがとても魅力的だった。

 俺とマユミはまず映画を見た後、クラブで踊り数杯のビールを飲んだ後、静かなバーでテキーラを飲みながら語り明かした後、ラーメン屋で腹ごしらえをしてホテルに向かった。

ここまでは完璧なデートだった。

しかし、問題はここからだった。

 ホテルに着くとマユミは勢いよく俺に抱きついてきた。

酒に酔っているせいもあってマユミは獣のように濃厚なキスをし、自分の舌を俺の下に激しく絡めてきた。

マユミはそのまま俺をベッドに押し倒し、キスしたまま服を脱がし始めた。

俺もマユミの服を脱がし始める。

二人はあっという間に全裸になり、絡みつきながら身体の至る所を嘗めたり揉んだりしながら存分にお互いの身体を味わった。

俺のペニスも充分に膨張していた。

マユミは大きく股を広げ、俺を受け入れる体勢を作り出した。

俺は前回の失敗を振り払うようにマユミの中にペニスを挿入した。

やはり好きな女とするセックスは一味違う。

 俺はマユミと付き合いだしてからある種の満足感を感じていた。

今まで充たされていなかった何かがやっと見つかったようなそんな達成感があった。

ここまでは俺がマユミと付き合い始める前から想像していた範囲内のことだった。

 しかし、付き合い始めて改めて浮上した問題もあった。

それはマユミとの〝性の不一致〟だった。

 気持ち的には俺はマユミとセックスしたいとずっと思っていた。

しかし、いざ実行してみるとマユミとのセックスにそんなに燃えていない自分がいるのだ。

激しく絡み合っていてもどこかに醒めた自分がいた。

俺はそんな自分を冷静に観察していた。

その心と体とのギャップが俺を悩ませた。

それはマユミと付き合い始めるまでは分からなかった悩みだった。

 そんな俺の気持ちにマユミも内心気づいているのか、どこか不安げな表情を時々浮かべるようになった。

 俺とマユミのセックスはいつもうまくいかず、俺はこれまで一度も絶頂したことがなかった。

そして、それはマユミも同じだった。

 その日も俺は激しく腰を動かし、ピストン運動を繰り返した。

マユミはそれに合わせ身体をくねらせ、高々と喘ぎ声を上げたがどこか演技っぽく、俺はみるみるうちに醒めていった。

 体中には冷たい汗が体にまとわり付いていた。

俺はすっかり萎えたペニスを抜き、マユミから離れた。

「……今日も駄目なの?」

「……ごめん。何が原因なのか俺にも分からないんだ」

「お酒のせいじゃないよね……」

「たぶん違うと思う」

俺はベッドに腰掛けたままタバコに火を点けた。

マユミはバスタオルを巻き、そのままバスルームに消えていった。

俺はタバコの煙を吐き出しながら、これからのマユミとの関係を考えていた。

 一方、鬼頭は崩壊した事務所にいた。

頭には包帯を巻き、顔にもいくつかのすり傷がみられる。

事務所には鬼頭以外の人影は無かった。

部下たちはみんな逃げてしまった。

それは〝デザイア〟を恐れていただけではなく、〝デザイア〟にこっぴどくやられた鬼頭にも恐怖を感じたからだった。

 突然の襲撃を受け、女を奪われ、〝デザイア〟に逃げられた鬼頭はその怒りを部下たちに当り散らした。

理不尽に殴られ、部下たちはとうとう愛想を付かせて鬼頭の元から離れていった。

そして、鬼頭は一人になった。

鬼頭は眉間にシワを寄せながら机の上に足を投げ出してタバコを吹かしていた。

鬼頭の頭の中には〝デザイア〟のことでいっぱいになっていた。

鬼頭は〝デザイア〟を殺したくてうずうずしていた。

しかし、〝デザイア〟の正体も居場所が分からない。

相手は素人じゃない。

間違いなく自分と同じ犯罪を犯すことを恐れていない悪の匂いを感じていた。

 鬼頭はこのイライラした気持ちを晴らす為に、外に出て女を犯すか男をボコボコにしたいと思っていた。

しかし、鬼頭は自分の欲望を押さえつけた。

ここで下手に動いて警察に捕まったら元も子もない。

小さな欲望を我慢し、より大きな欲望を成し遂げる為に考えをめぐらせていた。

 〝デザイア〟は長期延滞者に取立てに来た部下たちを襲っていた。

そこに奴の動機が隠されているはずだ。

何かしらの理由で〝デザイア〟は「ニガー」を的に掛けている。

しかし、奴の正体は極悪非道なレイパーだと鬼頭は確信していた。

それは〝デザイア〟が自分と同じ匂いを放っていたからだ。

それは一目見てすぐに分かった。

身体から湧き上がるあの独特のオーラ。

そして、犯罪者特有の悲しい眼。

ある意味、鬼頭は〝デザイア〟に共感を持っていた。

だからこそ絶対に許せなかった。

 その時、突然鬼頭の携帯が鳴った。

液晶画面を見ると非通知と出ている。

鬼頭は携帯を取った。

「お前が捜してる〝デザイア〟の情報を教えてやろうか?」

それは聞き覚えのある声だった。

「お前は和美が襲われたと垂れ込んできた奴だな。誰だ貴様?」

「そんなことはどうでもいい。とにかくお前に情報を与えてやる。『ワールド』の従業員の中に〝デザイア〟の協力者がいるぜ」

「協力者だと?もったいぶらずに奴の正体を知ってるならダイレクトに教えろよ。本当はお前が〝デザイア〟じゃないのか?」

「俺の言葉を信じないならそれでもいい。だが奴はジワジワとお前を追い詰めていくぜ。せいぜい寝首をかかれないように気をつけな」

そう言って電話は一方的に切れた。

 鬼頭は和美のことを考えていた。

鬼頭が生涯で唯一愛した女だった。

和美と出会うまで鬼頭にとって女は性の捌け口でしかなかった。

使い捨ての道具だった。

そんな鬼頭を変えたのが和美だった。

和美の愛が鬼頭の闇に一筋の光を生み出した。

 その和美が暴行を受け、傷つけられたのだ。

鬼頭の怒りは頂点に達していた。

今回のことがきっかけで鬼頭は今まで自分が犯してきた女たちへの罪の意識を感じていた。

初めて傷つけられた者の痛みを知った。

それを踏まえた上で鬼頭は〝デザイア〟を殺したいと思った。

 鬼頭は新しくタバコに火を点け思いっきり肺に吸い込んでから吐き出すと、突然立ち上がり、事務所を後にした。

          2

 三日後の深夜、世田谷公園の中にある丘に続く石段を鬼頭は上っていた。

その日は風が強く吹き荒れていて、何か不吉なことが起こる前兆のようなそんな感じだった。

木々が風に揺られ不気味なきしみ音を出す中で、鬼頭が丘の頂上にたどり着くとそこには九人の男達が一列に並んでいた。

 鬼頭は男たちの正面に立つと低い声で挨拶を交わした。

「久しぶりだな、兄弟たちよ。全員揃うのは何年ぶりだ」

九人の男達は鬼頭がギャングチーム「ニガー」を作る前の土台となった初期の仲間たちだった。

主に活動内容は暴力とレイプだった。

それぞれが好き放題に暴力に明け暮れ、女を犯しまくった。

皆それぞれが我が強く、一応鬼頭の圧倒的な強さで統率されていたものの、基本的には各々が好き勝手に行動していた。

その為に当時、警察に捕まる者や、ヤクザに追い込みを掛けられ、地方に逃げた者などが続出して決してまとまることがなく、自然に分裂してしまった。

 しかし、分裂するまでに彼らが作った伝説は数知れず、世田谷公園で噂されている〝10人のホームレス〟の噂も元々彼らが作った伝説の一つだった。

彼らは自分たちがやった悪事の数々をホームレスのせいにして警察の手から逃れていたのだ。

その為に公園内に架空の〝10人のホームレス〟がいるという噂を流し、公園に訪れた者たちを襲って楽しんでいたのだった。

夜の公園は彼らにとってホームグラウンドのようなものだった。

 その九人が鬼頭に呼ばれ一同に集まっていた。

鬼頭は一人ひとりに連絡を取り、面子を捨てて頼み込み、九人を集めたのだった。

目的はもちろん、〝デザイア〟を本気で捜し出して殺す為だった。

「今日集まってもらったのは以前話した通り、一人の男を捜し出し殺す為だ。そいつは素人じゃない。恐らく昔の俺たちと同じように暴力と快楽の為には手段を選ばないプロのレイパーだ。こいつが今回の的だ」

鬼頭は以前制作した〝デザイア〟のモンタージュを九人に配った。

そこには謎のたれ込みがあった〝デザイア〟の協力者が「ワールド」の従業員の中にいるという情報も付け加えられていた。

「やり方は昔の通り好きにやってくれ。ただし、〝デザイア〟本人は生きたまま俺の前に連れてきてくれ。それ以外の条件は無い。目的の為には手段を選ぶな。どれだけ他人を犠牲にしてもかまわない」

 九人はそれぞれチラシを見つめた後、丸めて捨てる者、ライターで火を点け燃やす者、几帳面にポケットに折りたたんでしまう者、その場で破り捨てるなど、自由に振舞いながら鬼頭の話を聞いていた。

「久しぶりにおもしろいゲームじゃないか」

「ちょうど、退屈してたんだ」

「誰が一番初めにこいつを見つけられるか競争な」

「でも、殺しちゃいけないんだよな」

「犯すのはいいんだろ?」

「試してみたいプレイがあるんだ」

「……面倒くさいな」

「こいつに女いるのかな」

「……」

九人はそれぞれ独り言のようにつぶやいた後、夢遊病患者のように闇の中に消えていった。

丘の上には鬼頭一人が残っていた。

鬼頭は九人の狂ったような独り言を聞いて久しぶりに嬉しくなった。

誰一人、昔と変わっていなかった。

鬼頭自身も「ニガー」の中で経済最優先で動いていたものの、どこか物足りなさを感じていた。

取り立て業者「ニガー」のメンバーもワルぶってはいたが、鬼頭から見ればまるで大人しく従順な常識に縛られた一般的の手下にすぎなかった。

今、必要なのは自分の言うことに従順に従う駒ではなく、各自で考え本能のままに行動する獣のようなモンスターだった。

 鬼頭はある意味〝デザイア〟に一目置き認めていた。

あの常識離れした行動力、欲望に正直な心意気、どれも自分と同じ反社会的な〝はぐれ〟特有の匂いをかもし出していた。

 鬼頭は丘の上のシイの木を思いっきり蹴り上げた。

シイの木は大きく揺れ、葉を散らせた。

 鬼頭は心の中で戦闘開始の狼煙を高々と掲げたのだった。

                                                 【続く】

 

 

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2006年11月18日 (土)

デザイアと呼ばれた男  VOL 12

          7

 マユミはがむしゃらに闇の中を走っていた。

憧れていた〝デザイア〟に冷たくされたのがどうにもやりきれなかった。

ある意味マユミは〝駆け引き〟に出た。

夜の公園で女が走り去れば男は追ってくるだろうと。

そう思ってマユミはここまで走ってきた。

坂道を下りきった辺りでマユミは足を止め、後ろを振り返った。

しかし、そこに〝デザイア〟の姿はなかった。

闇だけがそこに広がっていた。

辺りに人の気配はなかった。

生い茂る巨大な木々が風に煽られ、不気味な音をかもしだしていた。

時々、鳥の鳴き声が聞こえた。

マユミは急に心細くなった。

もう一度振り返ってみたが、やはり〝デザイア〟は追ってきていなかった。

仕方なくマユミはトボトボと歩き始めた。

今来た道を戻ろうとも考えたが前に進んだ方が確実に早く公園から出られるように思ったのだ。

 マユミは歩きながらこの公園に住むという〝10人のホームレス〟の噂を思い出していた。

以前、近所に住む女友達から聞いた話だったが、ここには10人のホームレスが住みついているという。

本当はもっと多くのホームレスが住んでいるはずだったが、特にその〝10人〟が危険だと噂されていた。

危ない噂はいくつもあり、以前の殺人事件もその一つだった。

猟奇的な噂もいくつもあり、公園で猫を焼いて食べたとか、たまたま通りかかった通行人の男の身ぐるみを剥ぎ、犯したという話もあった。

 数年前、夜の公園のプールに忍び込み、誰もいないプールでいちゃついていたカップルはいつの間にかプールの中で〝10人のホームレス〟に取り囲まれ二人とも犯されたという。

そして、事件の後も未だにその犯人は捕まっていないという。

 マユミの前方には公園内を走る子供用のミニSLの線路が見えていた。

ここを超えれば出口はもうすぐだった。

しかし、そこが一番危険な場所でもあった。

線路に囲まれた広場の中がもっともホームレスたちが多く住み着いている場所だった。

線路を挟んだ階段のトンネルの下にも数人の寝床が作られていた。

マユミは急に小走りになった。

今にもホームレスが自分の前に現れそうに思えてきたのだ。

そんな時、前方で人影が動いたような気がした。

目を凝らして見ると薄汚いホームレスがマユミの前で蠢いているのだ。

そのホームレスはもうすぐ夏だというのに冬ようのロングコートを身に纏い、よく見ると下は何も穿いていないようだった。

もしかしたら露出狂の変質者かもしれない。

マユミの足はガクガク震えだし、動くことができなかった。

ホームレスは徐々にマユミに近づいてきている。

その時、マユミは突然後ろから肩を叩かれた。

「キャー」

マユミは思わず大声で叫び声を上げた。

がむしゃらに腕を振り回し、ありったけの力を込めて相手を殴った。

「……待って、安久津さん俺です。五味です」

マユミはようやく涙が溢れ出した目を大きく見開いた。

目の前にはよく知った五味凛一郎が立っていた。

「……五味君!」

マユミは俺に飛びつくように抱きついてきた。

凛一郎に戻った俺は力いっぱいマユミを抱きしめた。

俺はマユミを抱きしめたまま夜の公園を後にした。

途中ですれ違ったホームレスは特に何もしてこなかった。

公園を出てもマユミは俺にベッタリとくっついたまま離れようとしなかった。

 公園を出た俺はマユミを家まで送っていった。

家に着くまでマユミは一言も話さなかった。

その間俺はしっかりとマユミの肩を抱きしめて歩き続けた。

マユミもそれを拒まなかった。

マユミは俺の腕の中にがっしりと包み込まれ、身を任せていた。

夜道を歩く俺とマユミはその時完全に男と女の関係だった。

 マユミの住むマンションの前に着いた所で、俺はマユミの肩から手を離した。

「もう、大丈夫ですよね」

「うん、ありがと。ねえ、まだ少し時間ある?よかったらビール飲んでかない?送ってもらったお礼におごるよ」

「……ありがとうございます」

マユミの口から出た言葉に俺は驚いていた。

マユミは何の警戒もなしに俺を部屋に誘っているのか?

やはり俺を男として見ていないのか?

しかし、俺を誘ったマユミの声はバイト中に聞くそれとは明らかに違っていた。

今のマユミの声からは色気が感じられた。

マユミは元々、女としては声は低い方だが、今日は特に低くフェロモンをおびているように感じた。

 フェロモンの源は男性ホルモンだ。

だから声が低い女はフェロモンを出していて色気がある。

國無が俺にレクチャーしてくれたことだった。

 俺はマユミに着いてマンションの階段を上っていった。

「どうぞ、散らかってるけど入って」

「お邪魔します」

マユミの部屋は言葉の通り散らかっていた。

一応、鏡台に化粧品などの女っぽい部分もあったが、それはほんの気休め程度で、どちらかというと男の部屋に彼女の化粧品が置いてあるといった感じだった。

壁には「クライム」をはじめ様々なロックミュージシャンのポスターが荒々しく貼られていた。

ベッドの上には脱ぎっぱなしの服に、テーブルの上には食べ終えたコンビニ弁当の空箱と飲みかけのペットボトルが無造作に置かれていた。

まさに普段のマユミの見たままの部屋だった。

しかし、逆を言えばそれだけマユミが普段から自分を偽らずに生きている証拠だと思った。

この男のような部屋を見て改めてマユミの純粋さを感じた。

俺が案内された部屋の隣にもう一つの部屋があったが扉がしめられていた。

 その場に突っ立ったまま辺りを見回している俺にマユミは缶ビールを手渡した。

「恥ずかしいからあんまり見ないで」

その言葉はまさに女のそれだった。

俺の頭の中で鬼頭の言葉が甦ってきた。

「こいつは男勝りだが、中身は女だ」

俺はますますマユミが愛おしくなった。

 俺は缶ビールの栓を開け、マユミと乾杯した。

「適当に座って飲んでて。今、何か摘み用意するから」

「……はい」

マユミは冷蔵庫を開け、小さなキッチンの周りで忙しそうに奮闘している。

俺はフローリングの床に腰を下ろし、ビールを飲みながら部屋の中を見回していた。

そこで俺は意外なものを見つけた。

それは「時計じかけのオレンジ」のビデオだった。

 「時計じかけのオレンジ」、スタンリーキューブリック監督の中で俺が最高傑作だと思っている映画だった。

主人公の少年アレックスはレイプと暴力とベートーベンを愛する異端児だった。

俺は昔からアレックスに妙に共感を持っていたが、マユミの部屋にこのビデオがあることが以外だった。

俺は「時計じかけのオレンジ」のビデオのパッケージを手に取り見つめていた。

そんな時、マユミが乾き物を持ってやってきた。

「それ元彼が好きだったんだ」

マユミは俺の手から「時計じかけのオレンジ」のビデオを取り上げ、デッキにセットしTVの電源を入れた。

瞬く間にあのけたたましい音楽と衝撃のオープニングが始まった。

「ねえ、五味君は何でさっき公園にいたの?」

「……いや、その、たまたま通りかかっただけですけど……」

マユミの真っすぐすぎる質問に俺はドキッとなった。

マユミは本当に俺が〝デザイア〟だということに気づいていないのか?

実は全てを知っていて俺を部屋に誘ったんじゃないのか?

頭の中で考えをめぐらしていた俺にさらにマユミが言葉を続けた。

「今日、あたしね、色々あってすごく不安だったの。さっき公園にいた時もすごく怖くて。その時、五味君があたしの前に現れてくれた。五味君は何も聞かずにあたしを抱きしめて送ってくれた。その時、胸がキュンとなったの……」

そう言ってマユミは俺の唇にキスした。

それはマユミとの初めてのキスだった。

TVの画面ではアレックスが仲間たちと共に作家夫妻の家を襲撃し、夫人を歌いながらレイプしていた。

俺は流れに身を任せ、マユミをしっかりと抱きしめ、唇を重ね合わせた。

受けと攻めが入れ替わる。

俺はゆっくりとマユミをベッドに誘導し、スマートに押し倒した。

          8

 俺はベッドの上に両手を付き、自分の体を支えながらマユミを見つめ、もう一度キスした。

マユミは目を閉じて俺のキスをそのまま受け入れた。

ベッドの上に横たわったマユミの姿は想像以上に色気を漂わせていた。

 俺は唇を下に移動させ愛撫しながらマユミの服をゆっくりと脱がしていった。

気持ちは高まっていたが、緊張はしていなかった。

それは國無の狂気の訓練で数々の女たちを犯してきた成果が出ているのか、俺は焦らずに確実にマユミを生まれたままの姿に変えていった。

マユミはまるで抵抗せずに、体を俺に預けていた。

マユミの裸はとても美しかった。

俺はこの日をどれだけ夢見ていただろうか?

この日の為に俺は悪魔に魂を売ったのだ。

俺はマユミの豊満な胸を揉みほぐし、唇で吸った。

マユミの甘い旨味が口の中から全身に伝わる。

俺はゆっくりと時間をかけマユミとのセックスを楽しむつもりでいた。

しかし、俺の中で何かが違っていた。

俺のペニスはマユミの裸に反応して勃起してはいるものの、何かが違っていた。

 俺はそんな自分の気持ちを誤魔化すように、より激しくマユミの体を弄り回した。

マユミは俺に合わせるように身体をくねらせ女になっている。

 そして、いよいよ俺がマユミに挿入しようとした時、異変が起こった。

今まで膨張していたペニスの張りが明らかに衰えてきているのが分かった。

それでも俺は強引に挿入しようとした。

マユミのヴァギナの中にペニスを入れ、腰を動かした。

しかし、まるで手ごたえがなかった。

マユミも異変に気づいたらしく、無言のまま俺を見つめていた。

 次第に俺の中で焦りが生まれ始めた。

俺はさらに激しく腰を動かした。

しかし、挿入したはずのペニスは簡単に外れてしまい、俺のペニスは見る影も無く縮小していた。

「どうしたの?大丈夫」

マユミが哀れむように声をかけた。

「あれ、どうしたんだろ。ビール飲んだからかな?」

「……いいよ。男ってそういう時あるんだってね。気にしなくていいよ」

「ごめんね……」

 俺はマユミから離れ、ベッドの上に腰を掛けていた。

すでにマユミも身体を起こしていた。

「ねえ、飲みなおさない」

「……うん」

マユミはキャミソールを着て、冷蔵庫から新しいビールを取り出して俺に渡した。

俺はビールの栓を開け、一気に喉に流し込んだ。

冷たいビールがさらに俺を冷静にさせた。

俺は自分の中で分かっていた。

今日、駄目だったのは酒のせいじゃない。

俺は隣に座ってビールを飲んでいるマユミに視線を向けた。

キャミソール姿のマユミは充分に色気に満ちている。

俺は心の底からマユミを愛している。

それなのにどうして……

「ねえ、俺の気持ちに気づいてた?」

「……え?」

俺は無造作にマユミに問いかけた。

「俺、ずっと前から安久津さんが好きだったんだよ」

「……ありがと。うれしいな。でも、今日まで全然気づかなかった。五味君はアケミが好きなのかと思ってた」

「そんな、俺が好きなのはマユ……安久津さんだけだよ」

「マユミって呼んでいいよ。でも、うれしい。あたしも今日、五味君のことが好きだって思った」

「また、二人で会ってくれる?」

「いいよ。それに明日も『ワールド』で会うじゃん」

「……そうじゃなくてさ、俺と付き合って欲しいんだ?」

「……本当にあたしでいいの?たぶん付き合いだしたら嫌な面も出てくるよ」

俺はマユミの唇にキスした。

「愛してる」

俺はマユミを力強く抱きしめた。

俺とマユミは手を握り合い、ベッドに寝そべって一晩中語り明かした。

それはとても楽しい一時だった。

 しかし、それとは別に俺は心の中であるシコリを抱えていた。

まさかこんなことが起きるとは思っていなかった。

確かに俺は今までレイプ以外でイッたことはなかった。

しかし、マユミだけは別だと思っていた。

しかし、今日、マユミと寝てみて分かった。

今のままでは俺はマユミとセックスしても絶頂することはできない。

それは深刻な問題だった。

俺の脳裏に國無の言葉が甦ってきた。

「お前は普通のセックスでは絶頂することはできない。例えマユミとヤッても恐らく結果は同じだろう。なぜならばお前はレイプでしか絶頂できないからだ」

國無の言葉が現実のものとなり、俺は絶望に打ちのめされた。

 俺はマユミを手に入れたうれしさとは反面、新たに浮上した大きな問題に悩まされていた。

                                                 【続く】

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