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2007年2月14日 (水)

デザイアと呼ばれた男  VOL 21

 こんにちは。D・二プルです。

 今日はバレンタインデー、二プルの特性有害チョコを召し上がれ!

   【二プルのおススメ映画】

 「ショコラ」

 

 フランスの小さな村。レノ伯爵(アルフレッド・モリーナ)の猛威で因習に凝り固まったこの村に、ある日、不思議な女ヴィアンヌ(ジュリエット・ビノシュ)と娘アヌーク(ヴィクトワール・ティヴィソル)が越してきてチョコレート店を開く。次々と村の掟を吹き飛ばす二人の美しい新参者に、訝しげな視線を注ぐ人々。しかし、チョコレートのおいしさに魅了された村人たちは、心を開き、それまで秘めていた情熱を目覚めさせていく。そして、夫の暴力を恐れ店に逃げ込んだジョゼフィーヌ(レナ・オリン)がヴィアンヌ母娘の生活に加わってまもなく、河辺にジプシーの一団が停泊する。ヴィアンヌは、そのリーダーであるルー(ジョニー・デップ)という美しい男性に心を奪われ、彼を店に招き入れる。だがよそ者であるジプシーたちを快く思わない村人たちの、ヴィアンヌに対する風当たりは強くなった。やがて老女アルマンド(ジュディ・デンチ)の誕生日パーティー中、ルーの船は放火され、ジプシーの一行は村を出ていく。そして疲れて眠ったまま息を引き取ったアルマンドの葬式が続く中、ヴィアンヌは荷造りをして、次の土地に移るべく、嫌がる娘を引っ張って出ていこうとするのだった。

 不思議なチョコレートを売る母娘が因習に閉ざされた村を幸せに導くファンタジック・ロマン。監督は「サイダーハウス・ルール」のラッセ・ハルストレム。脚本は「ダイナソー」のロバート・ネルスン・ジェイコブズ。原作はジョアン・ハリス。撮影は「102」のロジャー・プラット。音楽は「バガー・ヴァンスの伝説」のレイチェル・ポートマン。出演は「サン・ピエールの生命」のジュリエット・ビノシュ、「スリーピー・ホロウ」のジョニー・デップ、「ムッソリーニとお茶を」のジュディ・デンチ、「ナインス・ゲート」のレナ・オリン、「マグノリア」のアルフレッド・モリーナ、「ミリオンダラー・ホテル」のピーター・ストーメア、「レッド プラネット」のキャリー=アン・モス、「タメージ」のレスリー・キャロン、「理想の結婚」のジョン・ウッド、「ホテル・スプレンディッド」のヒュー・オコナー、「年下のひと」のヴィクトワール・ティヴィソルほか。2000年サン・ディエゴ映画批評家協会最優秀脚色賞受賞。

 それでは引き続き「デザイアと呼ばれた男」をお楽しみ下さい。

第七章  獣たちの宴

          1

「ワールド」は異様な空気に包まれていた。

まだ23時前だというのに扉には鍵が掛かり、「CLOSE」のプレートがぶら下がっていた。

 さらに店内は異常な状態だった。

通常所狭しと並べられているDVDとビデオの棚が左右両端に押しやられ、カウンターの前には大きなスペースが空けられていた。

その中央には手足に手錠を掛けられ口から血を流した小原がうつ伏せに倒れていた。

小原の周りを囲むようにシロー、タツオ、タツヒコ、ジャック、イブ、エナリがカウンターの上や地べたに座って鬼頭の到着を待っていた。

「誰か〝デザイア〟にたどり着いた奴はいたのか?」

「まだ誰も決定的な情報は掴めてないようだな」

「どうせ、途中で飽きて自分の趣味に突っ走ってたんじゃないのか?」

「鬼頭はまだかよ。人を呼び出しといて待たせるなんて相変わらず勝手な奴だ」

「退屈しのぎにそこで縛られてる坊ちゃん刈りを拷問しようか?〝デザイア〟の情報を知ってるかもしれないぜ」

その一言で小原の表情は凍りついた。

「それならコイツの歯を一本ずつ抜いていこうか?きっとしゃべるぜ」

「待てよ。どうせなら、ここにかわいい小動物がいるぜ。こいつと遊ばせよう」

「蟲どもを飲ませるのもオツだぜ」

「誰かコイツをレイプしてみろ。なんなら俺がやってもいいけどな」

「さっさと消しちまえばいいんだ」

「待て、そいつがどれだけ痛みを与えられるか開放してみるってのはどうだ?」

それぞれが勝手に自分の趣味を口走っていたが、小原からすればとても生きた心地がしなかった。

 その時、ドアをノックする音がした。

「お、鬼頭が来たか」

エナリがドアを開けると大きなダンボールを抱えたマルイケが立っていた。

マルイケはダンボールを抱えたまま中に入ってきた。

その後ろからユカが恐る恐る入ってきた。

ユカは縛られ、傷ついている小原を見てその異常な状態に驚いた。

まさか小原にも自分と同じような非常事態が起こっているとは思いもよらなかったのだ。

「おお、女だ」

ジャックがユカに近づき触れようとした。

「待て、まだその女に手を出すな。そいつは〝デザイア〟の情報を知ってるようだ。こいつが言うには〝デザイア〟は女だそうだ」

「女?本当かよ」

「女なら楽しみが増えるってもんだな」

「まあ、それが本当だったらな。もし、嘘だったら殺せばいい。息子の目の前でな」

そう言ってマルイケはダンボールを開け、中から巨大な熊のぬいぐるみを取り出し、ジッパーを開き中から眠っているスグルを取り出した。

「こいつ、また子供までさらってきやがった。本当に好きだなお前も」

「うるせえ、女はくれてやる。ただし、こいつは俺の獲物だ」

そう言ってマルイケは眠っているスグルの頬をヨダレが滴る舌で嘗めた。

「ちょっと、スグルに手を出さないで」

ユカがスグルに近づこうとするのをジャックが止めた。

「お母さん、息子さんより自分の心配をしたほうがいいんじゃないかな。こいつは子供にしか興味がないからあんたに手を出さなかったけど、ここにいる奴らは女とみれば目の色変えて飛びつくような変態ばかりだ。これからどうなるか想像できるか?」

ジャックはユカの肩を抱きすくめながら、髪を指で掬い上げながら匂いを嗅いだ。

「ちょっと触らないで」

「気が強い女は大好きだぜ」

「私に手を出したら〝デザイア〟の情報は教えないわよ」

「なーに、それでも構わないさ。そのうち話したくても話せなくなるんだからな」

「……」

ジャックたちの異常な態度にユカは言葉を失いどうすることもできなかった。

 その時、ノックがして、鬼頭が店内に入ってきた。

「お前ら、鍵を掛けとけって言っておいただろうが。ん、何だその女と子供は?」

鬼頭はユカとスグルに視線を向けた。

「鬼頭、この女が言うのは〝デザイア〟は女らしいぜ」

「何?ふざけるんじゃねえ。奴は間違いなく男だ。奴は俺の女を犯してるんだ。それに俺は実際に〝デザイア〟をこの目で見てる。あれは間違いなく俺たちと同じ男だ」

「……このアマ、やっぱり嘘だったのか。てめえ、どうなるか分かってるんだろうな」

マルイケはスグルの髪を掴み、スグルを宙に持ち上げた。

「止めて、息子には手を出さないで」

次の瞬間、ジャックがユカの服を一気に毟り取り、その場に押し倒した。

その様子を見ていた小原は身動きが取れない状態でもがいていた。

そんな小原の顔面をイブが蹴り上げた。

小原の額はぱっくりと割れ、おびただしい流血が辺りを染めた。

小原は棚に背中をぶつけ、ぴくぴくと痙攣したまま動かなくなった。

 その間にジャックはユカの両腕を右手で押さえ、左手を嘗め、ヴァギナを濡らすとそのまま自分のペニスを挿入した。

ユカは泣き叫びながら抵抗したが、かえってジャックを欲情させた。

「もっと抵抗しろよ。それがレイプの醍醐味なんだからな」

その様子を他の者たちは薄ら笑いを浮かべながら見ていた。

「おい、犯り終わったら殺すなよ。次は俺と兄ちゃんにまわせよ」

タツヒコがそう言っている間に、シローが犯されているユカの歯をペンチで抜いていた。

「うひょー、たまんないぜ」

「おい、お前ら、後始末はしっかりしとけよ。それに肝心の〝デザイア〟の情報がまったく掴めてないじゃないか」

鬼頭は少しキレぎみで言った。

シローはユカの二本目の歯を抜いた。

ジャックは激しくピストン運動を続けている。

タツオとタツヒコが倒れている小原に近づいて何かをしようとしていた。

鬼頭が小原に近づいていく。

「おい、コイツは死んだのか?」

「いや、まだわずかに生きてるよ」

イブがあっさりと言った。

マルイケがスグルを裸にして下半身を弄っていた。

その地獄のような光景を見てユカはもう助からないと覚悟を決めた。

シローに歯を抜かれながら突然、ユカは狂ったように大声で笑い出した。

その意外なユカの笑いに一瞬、全員の視線が集まった。

「確かに私は嘘をついてたわ。私はずっとあの女を憎んでいただけなの。あの女に嫉妬していただけなの。いつかあの女をめちゃくちゃにしてやりたいと思ってた。あんた達が捜してる〝デザイア〟なんて本当は全然知らないけど、あの女に聞くといいわ。あの女はその〝デザイア〟に恋していた。それは間違いない。あの子をたどれば必ず〝デザイア〟にたどり着くはずだわ……」

 鬼頭は思わず、ユカに駆け寄った。

「誰だ?その女ってのは。名前を言え」

「……安久津マユミ。あの女、ひどい目にあえばいいのよ。あいつが好きな男のせいで私やスグルがこんな目にあってるんだもの。どうせなら死ぬ以上に悲惨な想いをすればいいのよ。あ~あ、どうせなら私の手でめちゃくちゃにしてやりたかった……」

「……ジャック、どけ!その女にまだ聞きたいことがある」

鬼頭がそう叫んだ次の瞬間、ユカは自分の舌を噛み切って自殺した。

ユカは噛み切った舌を喉の詰まらせ、窒息死して死んだ。

ジャックはユカから離れ、服を着始めた。

「あ~あ、死んじまった。これじゃもう、おもしろくない」

「ヒデがいれば喜んで犯しただろうがな。そう言えばヒデが来てないな」

「そう言えばジョーの奴も来てないぜ」

「……やはりあの女、〝デザイア〟と繋がってたか。はやりあの女は第一に押さえておくべきだった。おい、誰かこの中で安久津マユミと接触した者はいるか?正直に答えろ。まさかまだ殺していないだろうな」

鬼頭がそう叫んだ時、突然、店内の照明が落ちた。

「……何だ?どうなってんだ。停電か?」

皆が動揺する中、鬼頭はハッとなった。

「……全員すぐに表に出るんだ。これは奴の罠だ。恐らく室内を暗くしてガスを流すつもりだ。表に出ても油断するな奴は必ず近くに潜んでるぞ」

鬼頭の言葉を聞いてイブを先頭に全員が急いで外に飛び出した。

「俺が〝デザイア〟を殺す」

全員が心の中でそう叫んでいた。

          2

 國無がアジトとして使っている廃屋団地の前に一台のワンボックスカーが停まっていた。

ワンボックスカーの窓ガラスにはスモークが張られ、外から中の様子を見ることはできなかった。

とはいえ、夜の10時を回ればこの辺は人通りもなくなる為、中を覗かれる心配はまずなかった。

 ワンボックスカーの後部座席には意識を失ったマユミが横になっていた。

もちろんマユミは息をして生きている。

 國無がなぜマユミを助けたのか?

國無はなぜマユミの場所を把握していたのか?

國無の行動はその時の気分次第で衝動的なもののようにも思えた。

しかし、それは緻密に計算され、全て初めからシナリオに書かれていた行動だった。

 マユミをワンボックスカーに残し、國無はアジトの廃屋団地の中の一室にいた。

しかし、そこはいつも凛一郎と密談する部屋ではなく、その隣に位置する國無以外誰も入れない秘密の部屋の一つだった。

 國無はこの団地内にそれぞれの役割に担う部屋をいくつも確保していた。

凛一郎が知る部屋はその中でも一つだけだった。

 國無は大きなソファーに座り、ワインを飲みながら優雅に目の前の画面を見つめていた。

画面といっても國無の目の前にあるそのモニターの数は全部で30あった。

一番大きなプラズマテレビを使ったメインモニターを筆頭に、壁一面にモニターが並べられていた。

 そこに映し出されていた映像は映画でも今日のニュースでもスポーツ中継でもなく、今、現在の「ワールド」周辺の映像が流れていた。

そこには鬼頭も、鬼頭の仲間たちも、〝デザイア〟に変身した凛一郎の姿も映っていた。

とても信じられないことだったが、國無は自ら用意し取り付けた隠しカメラで「ワールド」周辺で起きている出来事の一部始終をこの部屋で観賞することを可能にしてしまったのだ。

もちろん、音声も傍受可能だった。

 國無はテーブルの上に置いてあるノートパソコンを開き、自分の書いた「バク計画 五味凛一郎のデザイア」というホルダーを開いた。

そこには今まで凛一郎が体験してきた出来事がそのままシナリオの形になって書き上げられていた。

問題なのはこのシナリオが現実に起きた出来事の後に書かれたものではなく、凛一郎が体験する前に書かれていたということだった。

 凛一郎の行動は全て國無が作り上げたシナリオ上に書かれたことだったのだ。

もちろん、そのシナリオの中には人の死も描かれていて、シナリオに書かれている通りに人が死んでいた。

これは恐ろしいことだった。

誰も知らないところで恐ろしい出来事が現実に起こっていた。

 しかし、國無にとってこれは初めてのことではなく、もうすでに何度も経験していることだった。

國無は何度もこの恐ろしい実験を繰り返し行ってきた。

 ノートパソコンの画面には「ワールド」周辺での〝デザイア〟と鬼頭の仲間たちとの死闘が描かれていた。

画面を見つめながら國無は独り言を呟いた。

「いよいよ、ここまで来たか。さあ、楽しませてもらうぜ。凛一郎にとってここは大きな山場だ。ここで鬼頭の仲間たちとぶつかることで凛一郎に欠けている要素を吸収することができれば奴は生き残れる。もし、それができなければ凛一郎は死ぬ。これは大きな賭けだが、ここで死ぬようなら所詮そこまでの男だったということだ。この先、俺の作り上げたシナリオを進むことはできない。しかし、もしもここで生き残れることができれば、凛一郎は本物の犯罪者へと成長する。それにはどうしても超えなければならない一線がある。ヒデとの戦いでそれが開花するかとも思ったが、奴はギリギリのところで留まり一線を越えなかった。だが、ここでそれを見出せなければこの先の修羅場を生き残ることはできない……」

 國無は再び30の画面を見つめ、リモコンで凛一郎が映っている画面に切り替えた。

完全装備で〝デザイア〟に変身した凛一郎は闇に潜み、鬼頭たちの動向を窺っていた。

鬼頭たちは一斉に「ワールド」から飛び出してきたが一箇所には固まらずバラバラに散り、〝デザイア〟を捜していた。

鬼頭の仲間たちにとって基本的にチームプレイという考えは頭になかった。

それぞれが自分のスタイルに自信を持っていて、集団行動を嫌い、欲望と本能のままに行動する獣たちだった。

標的である〝デザイア〟が近くにいると知り、未知の敵に対する好奇心を燃やし、それぞれが自分の手で最高の獲物を陵辱したいと思っていた。

だから、他の者と協力しようと考えるものは一人もいなかった。

それは鬼頭も人一倍理解していた。

がからこそ自分自身が一番に〝デザイア〟を見つけなければならないと思っていた。

 しかし、物陰から見つめる凛一郎の視界に先にはイブの姿があった。

凛一郎は第一のターゲットをイブに決めたようだった。

 「初めはイブか。ちょうどいい。あいつは凛一郎に一番欠けている冷酷さを一番持っている」

そう呟くと國無はノートパソコンの別のフォルダーを開いた。

そこには鬼頭の仲間たちの細かい情報が鮮明に書き込まれていた。

その中で國無自身が殺害したジョーと凛一郎に重傷を負わされ警察に逮捕されたヒデの二人のデータは黒く色を分けられ分別されていた。

 「イブ タカアキ 21歳……幼い頃から両親に虐待され続けて育つ。9歳の時、親を撲殺して自宅を放火。その後世間から姿をくらませる。表向きには行方不明のまま処理されているが、その後、イブは生き残る為に犯罪を繰り返す。しかし、前科は一度もなし。殺害人数は調べがついているだけでも128人。恐らくはそれ以上。イブの場合は特殊な性癖は無く、ただ自分に邪魔な存在の人間はためらいも無く殺す。しかも殺す時に何の感情ももたず、ただ虫を殺すのと同じ感覚で人を殺す。メンバーの中でも一番〝デザイア〟に関心を持っていない。ただ、暇つぶしに珍しい害虫を殺してみようかぐらいの想い……」

 國無はファイルを消し、元のシナリオの画面に戻した。

「ワールド周辺バトルロワイヤル」一回戦は〝レイパー デザイア〟対〝無感傷殺人鬼 イブ〟だ。

                                                     【続く】

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