デザイアと呼ばれた男 VOL 20
こんにちは。D・二プルです。
皆さん、暖冬の日々をどうお過ごしですか?
【二プルおススメ映画】
「悪魔を憐れむ歌」
殺人課の刑事ジョン・ホブズ(デンゼル・ワシントン)が逮捕した残虐な連続殺人犯が死刑に処せられた。その直前、彼はジョンに奇妙な言葉を残していた。「また会おうぜ。俺は、お前の元に戻ってくる」。立ち会ったホブズの前で、男は確かに絶命したはずだった。“Time is on my side・・・”と歌いながら。
しかし、その直後から処刑された殺人犯と同じ手口と連続殺人事件が起きる・・・・。
ローリング・ストーンズの名曲『Time is on my side』が印象的な作品。見終わってもまだ耳に残っていて、まさに”悪魔”に魅入られたように、しばらくこの曲を口ずさみながら歩く日が続いた。
主演は実力派俳優、デンゼル・ワシントン。殺人課の刑事ジョンに扮し、犯行現場に遺された謎の言葉と、暗号めいた数字を手がかりに捜査を進める。人間から人間へと渡り歩く“悪魔”には通常の人間では到底歯が立たず、「オーメン」を見て感じたような絶望的な気持ちに陥る。その”悪魔”に対し、ジョンは秘策をもって最後の闘いを挑むが、それ以上に悪魔は巧妙だった。意外なラストは見モノ。
最近、”悪魔”に取り憑かれたような犯罪が多発している。動機不明の殺人事件も起こってきている。普通の人間が残虐な手口で殺人を犯したというニュースに接すると、人に取り憑く”悪魔”の存在を信じたくなってくる。全編にわたり、得体の知れない”悪魔”の不気味さと怖さを感じさせてくれる作品である。
監督:グレゴリー・ホブリット
製作:チャールズ・ローベン/ドーン・スティール
出演:
デンゼル・ワシントン
ジョン・グッドマン
ドナルド・サザーランド
それでは引き続き「デザイアと呼ばれた男」をお楽しみ下さい!
11
自転車でマユミの家に向かう俺の携帯が突然鳴り響いた。
液晶画面を見ると電話の相手は國無だった。
「もしもし……」
「凛一郎、今どこにいる?」
「……いま、ちょっと外に出てるんだけど……」
「大変だ。マユミが鬼頭の仲間にさらわれたぞ」
「……さらわれた?あんたそれを黙って見てたのか?何で助けなかったんだ」
「オレの所にも鬼頭の仲間が襲ってきたんだ。それを撃退するのに時間がかかってマユミを助けられなかった。すまん。とにかく、お前は今すぐ『ワールド』に行け。奴ら、『ワールド』で〝デザイア〟を待ち伏せするつもりだ。いいか、一度家に戻り、完全に装備を整えて〝デザイア〟として行くんだ。奴らは本気でお前を殺そうとしている。それにマユミや他の奴らに正体がばれないように気をつけるんだ。オレもなるべく早く着くようにするからな」
そう言って國無は一方的に電話を切った。
マユミが鬼頭の仲間にさらわれたって?
やはり予感が的中した。
マユミをさらった奴がどんな奴か知らないが、ヒデを見た限り危ない奴である可能性が高い。
俺は慌てて自転車をUターンさせ、「ワールド」に引き返した。
ユカは自宅のアパートで食事の後片付けをしていた。
ユカの息子スグルはリビングで大好きなテレビゲームをしていた。
ユカは昼間「ワールド」で働き、帰ってきてから家事とスグルの世話を全て一人でこなしていた。
スグルは今年で10歳になり、だいぶ手が掛からなくなってきたとはいえ、まだまだ母親を必要とする年頃だった。
ユカはスグルにシングルマザーであることを感じさせないように精一杯愛情を注いでいた。
ユカにとってスグルはかけがえの無い最愛の宝だった。
そんなユカでも女手一つでスグルを育てながら生活を支えていくのはとても大変だった。
それは並大抵の努力ではなかった。
ストレスも人並み以上に溜まった。
それでもユカは誰の力も借りずに生きていた。
そんなユカにとって自由奔放に生きるマユミは気に入らない存在だった。
同い年にもかかわらず好きなミュージシャンの追っかけをして、すき放題酒を飲み、男と乱闘騒ぎを起こすような女を許すことができなかった。
そのくせ、妙に男を引き付けるところがあり、マユミの顔を見るとユカはイライラした。
「ワールド」でマユミと一緒のシフトに入っている時、ユカは絶対に顔には出さなかったが、心の中ではハラワタが煮えくり返るほど、マユミに苛立ちを感じていた。
それでも「ワールド」内での仕事は互角で、いくらプライベートが乱れているとはいえ、ユカにはマユミを批判することはできなかった。
ユカは心の奥底でいつかマユミをめちゃくちゃにしたいと思っていた。
もちろんユカはマユミの過去を知らなかった。
マユミの恋人が殺されたことや、レイプされたことなどユカは知る由もなかった。
もし、ユカがマユミの過去を知っていれば事態は変わっていたかもしれなかった。
ピンポーン。
突然、アパートのインターホンが鳴った。
「ママー、誰か来たよー」
スグルはTV画面から視線をそらさずに叫んだ。
こんな時間に訪れる来客は珍しかった。
ユカは洗い物をしていた手を止め、玄関に小走りで近づいて行った。
「はーい、どちら様ですか」
「お届け物です」
ユカが覗き穴から見ると、ドアの前に大きなダンボールを抱えた男が立っていた。
ダンボールで顔は見えなかったが、持っていた荷物のせいもあってユカはドアの鍵を開けた。
するとダンボールを持った男はつかつかと玄関から室内に上がりこんできた。
「……ちょっとあなた、何なんですか?」
ユカはそう言って男の後を追いかけて部屋の奥へ進んで行った。
男は確かに宅急便の配達員の格好をしていたが、その行動は明らかに異常だった。
男はスグルの前にダンボールを置くと「あけてごらん」と甘い声で囁き、再び玄関のほうへ早足で歩いていった。
男はユカを通り越し、玄関の鍵を掛けると、再びリビングに戻ってきた。
男の顔は笑っていたが、ユカをリビングに手で押しやり、逃げ道を塞いだ。
突然の異常な事態にユカはどうすることもできなかった。
スグルはわけも分からずうれしそうにダンボールの包み紙を開けている。
そんなスグルの姿を男はジッと見つめていた。
ユカはその男の視線を見逃さなかった。
スグルを見つめる男の眼は明らかに異常だった。
ユカはその恐怖で声を出すことも動くこともできなかった。
スグルがダンボールを開けると中からは巨大な熊のぬいぐるみが出てきた。
「うわー、すごい、すごい」
スグルはユカの気持ちなど知らずに目の前のプレゼントにはしゃいでいる。
男はそんなスグルの頭をニタニタしながら撫でた。
「ねえ、おじさん誰なの?何でこんなプレゼントくれるの?」
「僕はマルイケ。夢の国から君を迎えに来たんだよ。さあ、一緒に遊ぼうよ」
そう言ってマルイケはスグルに棒つきのキャンディーを差し出した。
「わぁ、ありがと」
スグルはマルイケからキャンディーを受け取り、すぐに包み紙を剥がし、口の中に入れた。
キャンディーでスグルの口を塞いだマルイケは初めてユカに視線を向けた。
「お母さん、あなたに聞きたいことがあるんだ。正直に答えてね。〝デザイア〟がどこにいるか知ってる?」
「……〝デザイア〟?何それ?」
「僕は今〝デザイア〟って男を捜してるんだ。あなたはその男を知ってるんじゃないかな?知ってたら教えて欲しいんだ。〝デザイア〟はどこにいる?」
「……知らないわ」
「あっそう。やっぱりそうか……」
マルイケはユカの答えにまるで興味がなさそうに呟いた。
「初めからあんたが知ってる可能性は低かったんだよね。別にあんたが嘘つく理由も無いしね。まあ、あんたを選んだのは別の理由だったんだけど……」
そう言いながらマルイケはスグルに視線を送った。
マルイケの視線に釣られユカもスグルに視線を向けた。
すると今までキャンディーを嘗めていたはずのスグルはいつの間にか意識を失い床に倒れていた。
「スグル……」
「大丈夫、眠ってるだけだよ」
マルイケは初めから分かっていたように落ち着いた態度で言うと、巨大な熊のぬいぐるみのジッパーを開け、中から綿を抜き始めた。
マルイケは慣れた手つきで全ての綿を抜き取ると、その場に倒れているスグルを抱きかかえ、ぬいぐるみの中に詰め込んだ。
「……ちょっと何するの!」
マルイケの異常な行動にユカは殺到する。
「どうやら、あんたも〝デザイア〟の情報を知らないようだし、僕は自分の趣味を楽しませてもらうわ」
そう言ってマルイケはスグルの入った熊のぬいぐるみを今度はダンボールにしまいこんだ。
「ちょっと、息子を返して」
必死にダンボールにしがみつこうとするユカをマルイケは裏拳で殴り倒した。
「邪魔するな。僕は女には興味ないんだ。僕が愛するのは子供たちだけさ」
マルイケはそう言って淡々と作業を続けた。
マルイケは児童性愛の性癖を持っていた。
これまで何人もの幼い子供たちを欲望のままに弄び、なぶり殺しにしてきた。
〝ネバーランド〟と名づけた自宅に何人もの小学生を監禁していた。
マルイケにとっては3歳から12歳までの子供だけが性の対象だった。
それでもユカはスグルを取り返そうとマルイケに立ちはだかった。
マルイケは面倒くさそうにユカを殴り付け、倒れたユカの顔を踏みつけた。
「あんまり邪魔してると殺すよ。この子は僕が貰うって決めたんだから」
その一言でそれまでユカを支配していた恐怖はどこかに消え去った。
そして、ユカの脳裏に一つの考えが浮かんだ。
ユカは口から血を流しながらゆっくりと立ち上がった。
「せっかちね。それにあなた全然分かってないわ。あんたが捜してるって〝デザイア〟は女よ」
「……何だって」
マルイケは初めて手を止めユカに興味を持った。
「私は〝デザイア〟の正体を知ってるわ。でも、その子に手を出したら私は殺されたって〝デザイア〟のことを話さないわ。その代わり、その子を見逃してくれたら私が知ってる〝デザイア〟の情報を全部教えてあげるわ」
「……」
もちろんユカが言っていることは真っ赤な嘘だった。
ユカが〝デザイア〟の情報など知るはずも無かった。
それでも息子を想う母親の気持ちと日ごろ胸の奥に秘めたユカの欲望が一つとなり、その言葉にリアリティーを持たせマルイケを信じさせた。
「それは本当だろうな。口先だけの嘘だったらお前の目の前で子供を殺すぞ」
「いいわ。〝デザイア〟の正体は私と同じバイト先で働く女よ。今から一緒にその女の元へ行きましょ」
ユカは本能でしゃべっていた。
ユカが言っている女とはマユミのことだった。
ユカはスグルを助ける為にマユミを犠牲にしようと心に決めた。
とにかくスグルをマルイケから引き離したかった。
スグルを家に残し、マルイケと共にマユミの所へ向かい、無理やりマユミを〝デザイア〟に仕立て上げようとしていた。
そこでマユミが否定しても必ずチャンスが生まれるとユカは考えていた。
この場で何もしなければ事態は最悪のままだった。一瞬でもマルイケからスグルを離せばその間にスグルの安全を確保できると確信していた。
「ただ、その女の住所を確認する為に一回バイト先のビデオ屋に寄って。それで〝デザイア〟の元へ案内してあげる。ただしスグルはここに置いていくわ。それでいい?」
「駄目だ。こいつも一緒に連れて行く。お前が嘘をついていたらその場でコイツを殺す」
そう言ってマルイケはスグルが入ったダンボールを抱え上げ、玄関に向かった。
ユカもマルイケに着いていった。
今はマルイケに従うしかなかった。
外に出ればチャンスは生まれる。
ユカは一筋の光に希望を賭け、マルイケの車に乗り込んだ。
12
246沿いの歩道をスーツ姿のミシマは早足で歩いていた。
打ち合わせが長引いてすっかり遅くなってしまった。
ミシマにとって「ワールド」のバイトは特別なものだった。
小原が店長になるずっと前、ミシマは親友の頼みで「ワールド」のバイトを始めた。
その親友は「ワールド」の創立者で一緒に理想のレンタルビデオ店を作ろうと誓った男だった。
しかし、その親友は交通事故で死んでしまった。
その親友の意思を継ぎ、今でも「ワールド」でのバイトを続けていた。
元々ミシマはエリートプログラマーで今では自分の会社を経営していた。
ミシマは経済的にもバイトをする必要はなかったが、それでも「ワールド」を辞めようとは思わなかった。
ミシマにとって「ワールド」は親友が残した形見のような存在だったからだ。
早足で歩きながらミシマは腕時計を見つめた。
すでに一時間ぐらい遅刻している。
小原には電話も入れ、事情を説明したがはやり申し訳ないと思っていた。
そうだ、今日は半額キャンペーンの日だ。
突然思い出したミシマは自動販売機の前で立ち止まった。
小原に缶コーヒーでも買っていってやるか。
その時、ミシマは背後に気配を感じた。
ミシマが振り返るとそこにはスーツ姿のひょろっとした男が立っていた。
色黒でロングヘアーの髪を後ろで留めて体格のいいミシマに比べると、その男は善良なサラリーマンという印象だった。
「あの、突然すみません。私エナリと申しますが『ワールド』のミシマさんですよね」
「……ええ、そうですが、何か?」
ミシマはこのエナリという男にまったく見覚えがなかった。
しかし、向こうは自分のことを知っているように話しかけてくる。
「ワールド」の客かと思ったが、それにしてもこの男にはどこか得体の知れない不気味さが漂っていた。
思い過ごしかもしれないが、突然夜道で知らない人間に声を掛けられるのはあまり気持ちのいいものではなかった。
「ちょっとあなたにお聞きしたいことがあるんですが〝デザイア〟という者をご存知ですか?」
「……でざいあ?何ですかそれは?ちょっと心当たりありませんが」
するとエナリは思い出したようにポケットからチラシのようなものを取り出した。
それは以前「ワールド」に置いてあった見覚えのあるものだった。
「私達は今この男を捜しているんですよ。ミシマさん、ご存知ありませんか?」
「いや、わかりませんね。あの、私ちょっと急ぎますので……」
ミシマが立ち去ろうとすると、エナリは突然、ミシマのスーツの袖を掴み、動きを止めた。
「急ぐ必要はありませんよ。今日はもう『ワールド』は営業していませんから。バイトの必要はありませんよ」
「何だって。どういうことだ?」
「グダグダ言ってないでさっさと質問に答えろ。〝デザイア〟の知ってる情報を全部吐くんだ」
エナリは突然、口調と表情を一変させ、ミシマに迫ってきた。
その瞬間、ミシマはエナリの顔面を殴りつけた。
学生時代からミシマは喧嘩に明け暮れ、数え切れないほどの修羅場を潜り抜けてきた。
そんなミシマの本能がエナリの変貌ぶりに危機を感じ、手を出させたのだった。
基本的に喧嘩は先手必勝だ。
初めに一発いいのを決めてしまえば漫画や映画のように反撃してくることはまずありあない。
相手の戦意を喪失させてしまえば勝ちなのだ。
ミシマは長年のやんちゃをしてきた勘でエナリに強烈な一発をおみまいした。
エナリは左手でミシマに殴られて出た鼻血を押さえていたが、右手はミシマのスーツの袖を掴んだままだった。
「おい、いい加減手を離せよ」
「お前の力で離させてみろよ。あんなへなちょこパンチじゃお話にならないがな。このロンゲ野郎」
エナリのあざけるような挑発にミシマはキレた。
ミシマはエナリの胸倉を掴み、細い路地裏に押し込んだ。
そこで民家の塀にエナリを叩きつけ、何発も殴り続けた。
パンチの合間に肘鉄や膝蹴りも喰らわせた。
「どうだ、この野郎。調子に乗ってんじゃねーぞ」
ミシマは息を切らせながら怒鳴り散らした。
それでもエナリは右手を袖から離していなかった。
そればかりかエナリは不適な笑みを浮かべ、半分目蓋が塞がった眼でミシマを見つめながら言った。
「き、気持ちいい。あんたいいよ。最近じゃ、他人に暴力も与えられない軟弱な奴が増えて困ってたんだ。なかなか俺に痛みを与えられる奴が少なくてさ。さあ、もっと殴れよ。骨を折ったていい。殺す気でかかって来いよ。そんなんじゃ俺はまだまだイカないぜ」
ミシマがふと見るとエナリの股間は膨らみ、明らかに勃起しているのが分かった。
「……この変態野郎が」
ミシマはエナリの股間を思いっきり蹴り上げた。
エナリは一瞬飛び上がるほど悶絶したが、それでも身体をねじりながら悶え、手は離さなかった。
「……こいつ、狂ってやがる」
ミシマがそう呟いた時、エナリが口から血を流しながら言った。
「それが、お前の限界か?ゲームも終了だな」
エナリは突然、左手でスーツのポケットからナイフを取り出すと、ミシマの太ももに突き刺した。
ミシマの太ももからは血があふれ出し、ミシマはガックリと地面に膝を着いた。
「どうだ、刺された気分は?攻めるばかりじゃ疲れるだろう。攻守交代だ」
「……てめえ、何が目的か知らないが、人を刺してただで済むと思うなよ」
「そんなことどうでもいいよ。俺は痛みを与えられることにしか興味ないんだよ。与える方はあまり得意じゃないしな。お前が俺を殴りだした時はお前が〝デザイア〟かとも思ったがどうやら違うみたいだな。これでお前に用はなくなったわけだ」
そう言うとエナリは、それまでずっと離さなかった右手を袖から離し、ポケットから特殊な器具を取り出すと、一番近くにあったマンホールにその器具を差し込み、蓋を外した。
「これでも俺は社会的な立場もあるからな。お前の死体がすぐ出てくるとまずいんだよ」
エナリは独り言のように呟くと再びミシマに近づいて行った。
ミシマは近づいてくるエナリに恐怖を感じた。
エナリはミシマの前で立ち止まると冷たい視線で見下ろしながら言った。
「悲しむ必要はないぞ。たぶん他の『ワールド』の連中もあっちにいるから。ま、仲良くやってくれ。じゃあ、バイバイ」
エナリは笑顔でミシマの心臓をナイフで一突きにした。
そして、すばやくナイフを抜き取り、ミシマの喉元を掻っ切った。
大量の血がその場に飛び散り、エナリも返り血を浴びた。
エナリは血だらけのミシマを担ぎ上げると口の開いたマンホールからミシマを投げ込んだ。
ボッチャーンという下水に落ちる音を聞き、エナリは器具を使い、マンホールの蓋を閉めた。
その時、ポツポツと雨が降り出してきた。
その雨はエナリの体についた返り血を洗い流してくれるようだった。
エナリは両手を広げ、雨をシャワーのように全身で浴びた。
その時、エナリの携帯が鳴った。
電話は鬼頭からだった。
「もしもし」
「エナリ、すぐ『ワールド』に来てくれ。匿名の情報が入った。〝デザイア〟本人が現れるそうだ。だが、罠かもしれん。全員で迎え撃ちたいがなかなか全員と繋がらなくてな。とにかく急いで来てくれ」
そう言って鬼頭は電話を切った。
エナリは傘もささず、ずぶ濡れのまま「ワールド」に向かって歩き出した。
エナリの体に飛び散ったミシマの返り血が少しずつ雨で洗い流されていった。
【続く】
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