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2007年4月30日 (月)

デザイアと呼ばれた男  VOL 24

  こんにちは。D・二プルです。

皆さん、GWどうお過ごしですか?

「デザイアと呼ばれた男」もいよいよデンジャラスな展開へと発展してきました。

この先、どんなイカレタ結末が待っているのでしょうか?

では、続きを御覧下さい。

        

          7

 メイン画面で〝デザイア〟と獣姦兄弟との戦いを見ていた國無は思わず息を飲んだ。

またしても予想外の展開になった。

害虫を飲まされた時点で〝デザイア〟に勝ち目はないはずだった。

あの蟲に体内から侵食され、精神障害を引き起こし、発狂し自殺してもおかしくない状態だった。

それがどうだ、この結果は?

あの蟲を吐き出した直後、〝デザイア〟は意識が飛んだままの状態であの二人をぶちのめし、再起不能の状態においこんだ。

さすがの獣姦兄弟もまさか自分が男に犯されるとは夢にも思っていなかったはずだ。

それは二人の人生の中でも初めての経験だった。

 メイン画面には二人を犯し終えた凛一郎が朦朧とした状態でペニスを露出したまま呆然と立ち尽くしている。

恐らくまだ意識が完全に戻っていないんだろう。

凛一郎は無意識の状態であの兄弟に勝ったことになる。

國無はどうしても腑に落ちない点があった。

この戦いは今までの戦いとは何かが違った。

タツオとタツヒコと戦ったことで凛一郎はイブとの戦いで初めての殺人を犯した以上の〝何か〟を手に入れた。

それが果たして何だったのか?

國無は自分の膨れ上がる好奇心を押さえられなかった。

凛一郎の過去はこれまでにも散々調べてきたが、國無自身がまだ知らない情報が残されている。

この戦いでそのヒントがまさに隠されているように國無には思えた。

 以前、隣の部屋で凛一郎の潜在意識の奥を特殊な機器を使って調べて見たことを國無は思い出していた。

あの時、データには出てこなかったが凛一郎のトラウマが今の凛一郎に大きな影響を与えていることが分かった。

それが何なのか調べることでこの先の展開が大きく左右するかもしれない。

國無はサブ画面の一つに今まで録画していた〝デザイア〟と獣姦兄弟との戦いを巻き戻し、再度チェックした。

 エナリを殺害した直後、タツオ、タツヒコが現れ〝デザイア〟に襲いかかった。

前半の攻防は何の問題もない。

問題はやはりあの害虫を飲まされてからの凛一郎の変化だ。

國無は画面を早送りした。

タツオが凛一郎の口の中に害虫を放り込み、派手な合わせ技で凛一郎を地面に叩きつけた所で再生した。

害虫を飲まされた凛一郎は激しく苦しみ、痙攣を繰り返し、発狂寸前の状態で地面をのた打ち回っている。

恐らく幻覚を見ているのだろう。

國無は凛一郎がどんな幻覚を見ているのか死ぬほど気になった。

この状態の凛一郎の脳波を調べることができていればもっと詳しく知ることができたのに……國無は思わず、テーブルを拳で叩きつけた。

 画面の凛一郎はまだ痙攣しながらのた打ち回っている。

よほど苦しいのだろう。

あの状態でよく精神障害を引き起こさなかったのが不思議なぐらいだ。

國無は改めて凛一郎の精神の強さを実感した。

さすがに選びに選び抜いた主人公だ。

凛一郎は類まれない精神力の強さと限りなくデカイ欲望を抱えていた。

それはまさに稀に見る貴重な人材だった。

 画面上の凛一郎が動かなくなった。

さっきはこの時点で凛一郎は終わりだと國無は思った。

しかし、ここからが予想外の展開だった。

國無は画面に集中した。

害虫を口から吐き出した凛一郎は人が変わったような豹変振りを発揮した。

この時点であの害虫の毒に打ち勝ったことになる。

あの蟲が与える〝苦痛〟がそれまで眠っていた凛一郎の力を覚醒させたのだ。

凛一郎は意識を失ったままタツオを犯し終え、恐怖に打ちのめされたタツヒコを犯している最中だった。

その時、國無は凛一郎の口元に注目した。

タツヒコを犯しながら凛一郎は何かを口走っているようなのだ。

恐らく無意識で独り言を繰り返しているのだろう。

それはまさに凛一郎の潜在意識の奥に潜むヒントが隠されている可能性が高かった。

しかし、音声は聞き取れない。

國無は画面上の凛一郎の口元をアップで映し出した。

そして、音量をMAXにした。

それでも雑音がひどくて凛一郎の言葉は拾えなかった。

國無はアップになった凛一郎の唇の動きを読んだ。

……ト・モ・コ……

唇の動きからはそう読み取れた。

トモコ?

それは初めて聞いた國無も知らない名前だった。

トモコとは誰だ?

しかし、それが誰であろうとこの状態で凛一郎の口から出てきたということは最重要人物であることは間違いなかった。

こいつは思わぬ展開になってきた。

凛一郎のことは全て知らなければならない。

今、この場で凛一郎を見殺しにするわけにはいかなくなった。

國無は一瞬考えた。

計画変更だ。

さあ、どうしたものか?

國無は慌ててダンボールの中から一台の携帯を取り出し、電話を掛けた。

「おい、今どこにいる?……よし、仕事だ。…………そうだ、今すぐ準備しろ。とにかく今から言う場所に行って俺の言う通り動け。……ああ、そうだ。契約は忘れてないな。……よし、とにかくうまくやれよ。お前の動きはいつもチェックしているからな。失敗すればお前の欲望も適わなくなるぞ」

そう言って國無は携帯を切ると水槽の中に投げ入れて、慌てて外に飛び出した。

 中庭に出ると朦朧とした状態の凛一郎が今にも倒れそうにフラフラしながら立っていた。

國無は凛一郎を抱きかかえ、声をかける。

「凛一郎、オレだ分かるか?」

「……おっさん、マユミは……マユミはどうした?」

「マユミのことは心配するな。オレに任せておけ。それより今はお前の安全の方が先だ。さあ、来い。中に入るんだ」

國無は凛一郎を抱きかかえたまま、今までモニターで鑑賞していた隣のいつもの部屋に連れて行き、ソファーに凛一郎を寝かせた。

國無は慌てて、棚から脳波を読み込む装置を埋め込んだ枕を凛一郎の頭の下に置き、コードを伸ばし、ノートパソコンにセットした。

國無はもう一度、凛一郎の潜在意識の奥に隠された〝トモコ〟の謎を脳波から読み取ろうとしていたのだった。

凛一郎は安心したように意識を失った。

國無は凛一郎の寝顔を見ると部屋を出て外から鍵を掛け、急いで隣の部屋に移動した。

さあ、これからが忙しくなるぞ。

まずは邪魔者を消さなければならない。

それから駒の移動と新たな欲望を生み出さなければならない。

やることはてんこ盛りだった。

しかし、國無はこの予想外の大波乱を大いに楽しんでいた。

          8

 鬼頭は國無の忠告に従い、廃屋団地の裏手に来ていた。

イブの死体を見た鬼頭は精神的にかなり追い込まれていた。

〝デザイア〟はハッタリでもなく、現実にイブを殺していた。

それは〝デザイア〟が人を殺すだけの度胸と力を持っていることが証明された。

これはうかうかしてはいられない。

一般人に追い込みをかけるのとはまるでわけが違う。

9人の仲間を呼び寄せた時、鬼頭はすでに〝デザイア〟と戦争するつもりでいた。

しかし、それは初めから〝勝利〟を予想してのことで、まさかあのメンバーが〝デザイア〟に殺されるとは夢にも思っていなかった。

鬼頭の中で〝デザイア〟の存在がなんとしても今のうちに殺しておかなければならない敵となった。

しかし、頭の中で自分と〝デザイア〟の死闘を思い浮かべて見ても、最後に自分が立っている姿が想像できなかった。

これまで鬼頭は自分が負ける姿を想像したことはなかった。

イブやエナリたちと戦った時も、苦戦はしたものの決して負けるとは思わなかった。

しかし、〝デザイア〟にはそれ以上の未知なる恐怖を感じていた。

電話の男の言うことを聞き、ここまでやってきたがもうすぐ〝デザイア〟と対峙することになるだろう。

 その時、突然鳴り出した携帯の着信音に鬼頭はハッとなって携帯を取った。

「おい、お前の目の前にワンボックスカーが見えるはずだ。前の右のタイヤの下にキーが置いてある。その車でジョーの隠れ家に行くんだ。そこに奴がいる」

それだけ言うと國無は電話を切った。

 鬼頭は目の前に停まっていたワンボックスカーのタイヤの下からキーを取り、ドアを開け、車の中に乗り込んだ。

運転席に座り、車を発進させようとした鬼頭は後部座席に人の気配を感じ振り返った。

そこには寝息を立てて眠るマユミがいた。

一瞬、鬼頭はギョッとなったが、すぐに心を落ち着かせ、頭の中で思考を巡らせた。

 この電話の男が言っていた〝勝利の女神〟か?

この女は確か「ワールド」の従業員で何度か顔を合わせている。

そう言えば以前にもどこかで会ったことがあるような気もするが……今は思い出せなかった。

とにかく、今はそんなことを考えている時じゃない。

 鬼頭はキーを回し、エンジンをかけ車を走らせた。

目的地はジョーのアジトだ。

そこで待ち受けている悲劇の舞台を鬼頭は知る由もなかった。

 後部座席で眠るマユミは夢を見ていた。

真っ暗な中でマユミは得体の知れない何者かに追いかけられていた。

それが誰なのかマユミには分からなかった。

ただ恐怖だけが着いてきた。

逃げても逃げても振り払えない恐怖。

追ってくる者の足音が次第に近づいてくる。

獣のように荒い吐息が耳元にこだましている。

次の瞬間、マユミは心臓が止まりそうになった。

闇の中から触手のように伸びてきた腕がマユミの肩を掴んだ。

マユミが振り返るとそこには〝デザイア〟の姿があった。

マユミが一瞬ほっとした瞬間、〝デザイア〟がドロドロに溶け出し、白骨死体に変貌した。

 マユミは叫び声を上げ、起き上がった。

目の前には車を運転する鬼頭の姿があった。

マユミはこの状況がまるで理解できなかった。

ジョーの家でSMプレーをしていたはずが、気が付くと走っている車の中で目の前には鬼頭がいる。

まるで意味が分からなかった。

いつの間にか服も着ていた。

それは初めて見る服だった。

黒のキャミソールとデニムのハーフパンツ。

しかも、サイズはぴったり合っている。

マユミと顔を合わせた鬼頭はすぐに視線を前に戻し、無言のまま運転を続けている。

マユミは自分が鬼頭にさらわれたのかと思った。

しかし、今まで見ていた背筋が凍りつくほどの悪夢を見ていたおかげで、現実に起きているこの状況がまるで怖くなかった。

マユミは後部座席の背もたれに体を預け、ゆっくりと流れに身を任せた。

 一方、廃屋団では鬼頭と同じように謎の男からの電話によって呼び寄せられたシローとジャックが顔を見合わせ、その場に立ち尽くしていた。

シローとジャックの足元には白目を向き泡を吐いて気絶しているタツオとタツヒコ、そして、首に絞められた痕がまだはっきりと残って息絶えているエナリの姿が無残に横たわっていた。

「一体どうなってんだ?三人もいて〝デザイア〟一人にやられたのか?」

「その〝デザイア〟はどこにいったんだ?三人を殺って逃げたのか?」

「お前も電話でここに呼び出されたんだろ?あの電話を掛けてきた男が〝デザイア〟だったんじゃないか?」

「これは罠か?」

その時、二人は背後に気配を感じ振り返った。

そこにはサングラスに黒のニット帽を被り、全身黒尽くめの男が立っていた。

「お前が〝デザイア〟か?」

「……そうだ」

ジャックの問いに答えた〝もう一人のデザイア〟は、即座に懐からサイレンサー付の銃を抜き、ジャックに向けて発射した。

弾丸はジャックの心臓付近を貫通し、ジャックは音を立てて地面に倒れこんだ。

突然の出来事に事態を飲み込めないシローに向けて〝もう一人のデザイア〟は容赦なく銃を撃ち放った。

首筋を撃たれたシローは首から流れ出る自分の血を左手で押さえながら、ジャックの隣にゆっくりと崩れ落ちた。

 〝もう一人のデザイア〟はゆっくりと倒れているシローたちに近づいて行き、一人ひとりにとどめの銃弾を喰らわせた。

男はすでに死んでいるエナリの額をも撃ち抜き、不適な笑みを見せた。

まるでゲームでも楽しむように一瞬で四人の男を殺害したその男は携帯を取り出し電話を掛け始めた。

「終わったぜ。全部片付いた。あんたの言うとおり5体の死体が出たぜ」

「分かった。死体はそのままでいいからお前は残りの任務を完了しろ」

任務の報告を終えた男は茂みの中からハシゴを取り出し、踊り場にハシゴを掛け真っ暗な団地内に入って行った。

 ペンライトをかざしながら階段を上っていった男は、鍵を開け、ソファーで寝ている凛一郎の前に立ちはだかった。

「こいつが凛一郎か……」

凛一郎は自分の前に見知らぬ男がいることなどまったく気づかず眠っている。

〝もう一人のデザイア〟は凛一郎の腕にある液体の入った注射を打ち込んだ。

これは全て國無からの指示だった。

男は注射をゴミ箱に投げ捨てると凛一郎を担ぎ上げ、部屋から出て行った。

                                                  【続く】

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2007年4月18日 (水)

デザイアと呼ばれた男     VOL 23

こんにちは。D・二プルです。

ご無沙汰してます。今日は私の誕生日なので久しぶりにここにやってきました。

「デザイアと呼ばれた男」の続きをどうぞ!!!

 けたたましいサイレンが鳴り響き、5台のパトカーと少し間をおいて1台の救急車が「ワールド」の前に集結した。

パトカーの中から十数人の警察官と救急車から二人の救急隊員が騒々しく「ワールド」の階段を駆け上がって行った。

それまで静かだった周囲が急に騒がしくなり、いつのまにか野次馬の群れも集まっていた。

 俺は道を挟んだ「ワールド」の向かいの自動販売機の前で手首の拘束具を外し、優々とタバコを吹かし、そのにぎやかな夜の騒動を見物していた。

 いつもの〝デザイア〟の全身黒の衣装は天井裏を這いずり回ったせいでホコリまみれに汚れてしまったので天井裏に置いてきた。

それにあの格好で近くをうろうろしていたらたちまち鬼頭たちに見つかって囲まれてしまうだろう。

今の俺はヤンキースのキャップをななめにかぶり、ナイキの黒のTシャツにダボダボのジーパン姿で、サングラスとシルバーアクセをジャラジャラ着けたB系ファッションに身を包んでいた。

 國無が郵便受けに入れておいてくれた新アイテム〝デザイア七変化セット〟がさっそく役に立った。

これは七枚のビニール袋の中に小さくたたまれた服がそれぞれ入っていて、まったく違った服装、メガネ、帽子、カツラ、アクセサリーなどの小物からその格好に合わせた武器までコンパクトに収納されていた。

このアイテムのおかげで俺はどこにいても別人になることができた。

 俺はタバコを吹かしながら体を休めていたが、頭の中はごちゃごちゃにパニクっていた。

ユカの死、重傷を負った小原、そして、初めての殺人……今日は何て一日だ。

それに國無が言っていた、さらわれたマユミの行方が気になっていた。

俺は携帯を取り出し、國無に電話した。

しかし、電話は繋がらなかった。

恐らく、國無もこっちに移動中なのかもしれない。

とにかく今はマユミを見つけ出し、無事に助け出さなければならなかった。

俺は変装しているが、奴らの顔は写真でワレている。

一人一人見つけ出し、マユミの居所を吐かせるか。

 目の前の「ワールド」は既に警察の手によって封鎖されていた。

鬼頭たちもうかつには近づかないだろう。

それでも奴らが必死に〝デザイア〟を捜していることは間違いない。

 その時、俺は少し離れた246沿いの角に立っている一人のサラリーマン風の男に気が付いた。

サラリーマン風の男は携帯で誰かと話しをしている。

俺は國無の資料の中の写真とサラリーマン風も男を見比べてみた。

間違いない。

奴は鬼頭の仲間のエナリ カズオだ。

 エナリは電話で話しながら慌てて246沿いを走って行った。

俺は辺りを警戒しながらエナリの後をつけた。

周りに他の仲間の姿は見えない。

だが、油断はできない。

奴らは必ず近くにいるはずだ。

 エナリは携帯を耳に当てたまま早足で246沿いを直進している。

俺はエナリの20メートル後ろにぴったりと張り付き、尾行を続けた。

それにしてもエナリは誰と話しているんだろうか?

鬼頭から何か指示されているのかもしれない。

 尾行を続けているとエナリは246沿いからわき道に曲がり、世田谷公園を通り抜け、廃屋団地の方向に向かっていた。

エナリは一体どこへ行こうとしているんだ?

エナリは俺の尾行に気づかずにそのまま廃屋団地の中に入って行った。

どうなってるんだ?

俺は急いで廃屋団地の敷地内に入り、建物の角を曲がって姿を消したエナリの後を追った。

角を曲がり、俺はギョッとなった。

俺の目の前にエナリがこちらを向いて立ち止まっていたのだ。

「お前がデザイアか?モンタージュとだいぶ違うな。さっきの電話で言ってた通りだ。誰だか知らないが助かったぜ。お前の首は俺がもらった」

「……」

どういうことだ?

エナリは俺を待ち構えていた。

俺が尾行していることを知っていたというのか?

それにエナリが電話で話していたのは一体誰なんだ?

「……おい、何でここを選んだんだ?鬼頭の指示か?」

「いいや、鬼頭じゃない。誰だか知らないが匿名で俺の電話に掛かってきたんだ。〝デザイア〟の居所を知ってるってな。そいつがここに来るように言ったんだ。そいつが突然〝デザイア〟はお前の後ろにいるって言って電話を切った時はいたずらかとも思ったが信じてよかったぜ。お前、俺たち以外にも敵がいるみたいだな」

「……」

エナリはジッと突っ立ったまま俺に近づいてこなかった。

警戒しているのか、それとも何か他に狙いがあるのか?

「おい、女をどうした?」

「女?ビデオ屋で自殺した女か?あの女を犯ったのはジャックだぜ。あとシローも何かしてたな。俺は女には手を出してないぜ」

エナリが言っているのはユカの事だとすぐに分かった。

ユカはレイプされ自殺したのか。

俺は再び心の中でやるせなさが膨張を始めた。

「俺が殺ったのはロン毛の色黒の男だ。初めはあのおっさんが〝デザイア〟だと思ったんだが、とんだ見掛け倒しだったな」

何だと……エナリが言っているのはミシマさんのことか?

こいつ、ミシマさんを襲ったっていうのか?

「……おい、そのロン毛の男はどうした?」

「もちろん、殺してきたぞ。あまりにもがっかりしてな。さっきまであいつの返り血がべったり付いてたんだが、雨でだいぶ落ちたようだな。あいつの死体は当分出てこないぜ」

「……」

 辺りはとても静かだった。

近所の住民は夜はこの辺りには近づかない。

世田谷公園同様、痴漢や変質者が出没するのもこの辺りが多かったからだ。

「ワールド」の前に居た時、俺はどうやってこいつらを倒していこうか考えていた。

あの辺りは夜でも人通りが多いし、路地裏にでも連れ込むしかないと思っていた。

それに俺自身の手で警察を呼んでしまったことで、「ワールド」周辺で鬼頭たちと激突するのは得策ではなくなってしまった。

しかし、ここなら思いっきりやれる。

「そうか、これでおあいこだな。俺もさっきお前たちの仲間の一人を殺してきたばかりなんだ」

「!!!」

エナリが俺の言葉に反応した次の瞬間、俺はエナリに向かって突進していた。

俺は指全部にはめたシルバーのゴツイ指輪付きの拳を握り締め、エナリの顔面を殴りつけた。

拳はエナリの右頬に命中し、ミシリという音を立てて、エナリの歯を数本砕き散った。

口から血を流し、ふらついているエナリに俺はボディーブローを叩き込み、下がった顎に膝蹴りを喰らわせ、さらに股間を思いっきり蹴り上げた。

それでもエナリが倒れなかった事に俺は驚きを隠せなかった。

正直、俺は殺す気でエナリを攻撃した。

それでもエナリはダウンすらしなかった。

 俺はいつか國無が言っていたことを思い出した。

「人間、殺す気で他人を殴ったとしても潜在能力の70%ぐらいしか出すことができない。それは自己防衛本能が働き、自分の肉体を傷つけない為だ。相手を本気で殺したい時は格闘技をしていては駄目だ。もっと違った目線で急所を確実に攻める。本来急所とはどんな男でも鍛えようのない場所なんだ。まあ、主に体の中心だな。眉間、鼻、顎、喉、みぞおち、股間、ここを確実に攻めるのが望ましい」

俺が考え事をしていた一瞬の隙をエナリは見逃さなかった。

エナリは攻撃を受けた直後とは思えないようなスピードで一瞬で俺の背後に回りこみ、チョークスリーパーをかけ首を絞め始めた。

「……」

「いきなりいい攻撃だったぞ。さすが〝デザイア〟だ。さっきのロン毛よりもいい攻めをしてくれる。だが、これが限界か?ロン毛は俺の一回の返しで沈んじまったぞ。お前もこのまま俺に絞め殺されちまえばあいつと同じレベル……」

その瞬間、俺は俺の首を絞めているエナリの右腕の小指の骨を折った。

一瞬、エナリの腕の力が緩まった隙に俺はチョークスリーパーから脱出した。

そして、俺はエナリの左足の膝の下に強烈な前蹴りを喰らわせ、足の骨を折った。

エナリはバランスを崩し、地面に膝を着いた。

俺はエナリの背後に回り、着けていたシルバーのネックレスを吹き契り、エナリの首に巻きつけた。

エナリは悶えながら股間を大きく膨らませていたが、俺がネックレスで絞める力をさらに強めるとエナリはそのまま絶頂し、股間の周りが湿り始めた。

そして、エナリは口から泡を吹き、息絶えた。

俺は今日二人目の殺人を行った。

いくら感情的になっていても、人を殺す瞬間は手に嫌な感じが伝わってくるものだ。

イブを射殺した時はそれが銃だった為にそれほど実感はなかったが、今回はネックレスで絞め殺した時の感触がもろに腕から伝わってきた。

やはり人を殺すのは嫌なものだ。

その時、俺は背後に人の気配を感じ振り返った。

「おい、あそこに倒れてんのエナリじゃないか?」

「本当だ……ってことはあいつが〝デザイア〟か?電話で言ってた通りだっだね兄ちゃん」

そこには見るからに双子だと分かるほどそっくりの二人の男が立っていた。

こいつらも写真にあった鬼頭の仲間だ。

どうなってるんだ?

次々と集まってきやがる。

一体鬼頭の仲間に俺の居所をリークしているのは誰なんだ?

          6

 廃屋団地の一室では國無がワインを飲みながらメイン画面を見つめていた。

メイン画面には下の裏庭に佇んでいる〝デザイア〟と〝獣姦兄弟〟タツオとタツヒコが睨み合っていた。

三人の欲望が今にも激しくぶつかろうとしていた。

 國無はふとメインモニターからサブモニターに視線を逸らせた。

一つのサブモニターの中では「ワールド」周辺をうろうろしている鬼頭の姿があった。

 國無は画面を見つめたままダンボールいっぱいに詰まった携帯電話の中から一台を取り出すと電話を掛け始めた。

サブモニターに映っている鬼頭が自分の携帯を取りだし、電話に出た。

「おい、まだそんな所を捜してるのか?〝デザイア〟はもうとっくに別の場所に移動してるぜ」

「……また、お前か。一体、お前の狙いは何なんだ?まあ、いい。奴は今どこにいるんだ?」

「〝デザイア〟は今、お前の仲間を一人殺して、次の獲物を狙ってるぜ」

「……俺の仲間を殺しただと?ふざけたこと言ってるんじゃねえぞ?」

「だから、お前らはバカだっていうんだ。自分達が特別だとでも思っているのか?お前らだって一人の人間だ。そして、お前らが捜している〝デザイア〟はお前ら以上に凶悪な犯罪者なんだぜ。その証拠を見せようか?お前が今いる場所からすぐ246に出て2つ目の路地を右に曲がって、またすぐ3つ目の路地を左に曲がってみな。お前の仲間の一人が殺られてるぜ」

そう言って國無は携帯を切るとダンボールの中には戻さず、自分の手が届くテーブルの隅に置いた。

 鬼頭は謎の電話の男の言う通りに、246に出て、2つ目の路地を右の曲がり、3つ目の路地を左に曲がってみた。

すると路地の奥に転がっていたのは、すっかりと変わり果てたイブの姿だった。

イブは頭を撃ちぬかれ抜け殻のように小さくなっていた。

イブの死体を見て立ち尽くしている鬼頭の元に再び國無からの電話が入った。

「どうだ?これで分かっただろ?狙われてるのはお前たちの方なんだよ」

「……」

「何だ、黙んまりか?そんなお前に逆転のサヨナラのチャンスをやろうか?今から言う場所に行ってみな。お前を救ってくれる勝利の女神が待ってるぜ。いいか、場所は……」

「待てよ。お前の目的は一体何なんだよ。俺たちを追い詰めようとしてるんじゃないのか?なぜ、俺に味方するようなことを言う?」

「……俺の目的はそんなに単純じゃないのさ。別にお前らを潰すことが目的でもないし、俺はデザイアの味方でもないんだぜ。俺の言葉を信じないのは勝手だが、お前が〝デザイア〟に勝つにはもう手段は選んでいられないんじゃないのか?」

そう言うと國無は静かに電話を切った。

 切れた電話を耳に当てたまま、鬼頭はその場を動かなかった。

鬼頭はもう一度目の前のイブの死体に視線を合わせた。

 鬼頭は殺し合いにおいてイブに絶対の信用を持っていた。

癖あるメンバーの中でもイブは屈折した性癖を持たず、人を殺すことに対して何のためらいも持たない男だった。

そのイブが、数分前までは生きていたイブが、今は変わり果てた死体として薄暗い路地裏にゴミのように転がっている。

鬼頭は妙な胸騒ぎがした。

「ワールド」の従業員にとって今日が最悪の一日であったように、俺たちにとっても今日が最悪の一日になるような気がした。

鬼頭は謎の犯罪者〝デザイア〟に恐怖を感じていた。

もしかしたら敵は想像以上に巨大なものなのかもしれない。

鬼頭は得体の知れない〝何か〟を〝デザイア〟に感じていた。

電話の男が言うように、もうなりふりかまっていられない所までいつの間にか追い詰められているのではないか。

電話の男の言うことを信じるわけではない。

だが、勝利の女神を手にしておいても損はないはずだ。

例えそれが、疫病神だとしても、その時はその時だ。

鬼頭は決意したように國無が指定した場所に向かって歩き出した。

 サブモニターで鬼頭の様子を見ていた國無は思わずほくそ笑んだ。

言葉巧みに人を駒のように動かすのは実に快感だ。

國無はノートパソコン上の自分が書いたシナリオに眼を向けた。

いまだに誰一人として気づいていないが、全て自分の作り上げたシナリオの通りに動いている。

この物語の登場人物たちは皆、自分の欲望に忠実に動いていると思い込んでいる。

その先に待ち受けているのが〝絶望〟だということも知らずに……。

國無は金魚が泳ぐ水槽の中に鬼頭と話した携帯を投げ入れた。

水槽の中にはすでに8つの携帯が沈んでいた。

國無は再びメイン画面の〝デザイア〟に目を向けた。

廃屋団地の裏庭ではB系ファッションの〝デザイア〟が地べたで泥だらけになりながらのた打ち回りもがき苦しんでいた。

その様子をタツオとタツヒコがニタニタしながら見下ろしていた。

國無が鬼頭と電話でやり取りをしていた数分間に事態は展開していた。

睨み合う硬直状態の中、初めに動いたのはタツヒコだった。

タツヒコは〝デザイア〟に向かって直進していき大振りのパンチを繰り出した。

しかし、〝デザイア〟は難なくタツヒコのパンチをかわし、逆に強烈なボディーブローを叩き込んだ。

タツヒコは目に涙を浮かべ、口から胃液を垂らしながら地面に倒れこんだ。

しかし次の瞬間、タツヒコは倒れざまに〝デザイア〟の足首を掴んだ。

そして、息をも切らさぬ間にタツオが〝デザイア〟の後ろに回り込み、羽交い絞めにした。

そして、タツオは〝デザイア〟の口の中にあるものを放り込んだ。

二人は息をぴったりと合わせ、タツオは首を、タツヒコは足首を掴んだまま思いっきり引っ張り、〝デザイア〟を地面に叩きつけた。

その拍子に〝デザイア〟は口の中に入ったモノを飲み込んでしまった。

そして数秒後、〝デザイア〟は発狂するように苦しみ始めた。

 タツオとタツヒコが〝デザイア〟に飲ませたのはネットで密輸したある違法の害虫だった。

その蟲は古代中国で拷問に使われていたもので、その蟲に刺されると幻覚を見たり、過去のおぞましい記憶を思い出したりして、精神に害をもたらす有害指定昆虫だった。

その蟲を二人は〝デザイア〟に飲ませたのだ。

これはまだ誰にも試したことのない試みだった。

刺されただけでも恐ろしい効果が現れる害虫を体内に入れたのだ。ただで済むはずがない。

その証拠に目の前の〝デザイア〟は発狂しながら地面を這いずり回っている。

タツオは〝デザイア〟のサングラスを外し、その素顔を拝みたいと思っていた。

しかし、それでもまだタツオは〝デザイア〟を警戒していた。

この男は土壇場で何かをやらかすような胸騒ぎがタツオを動かさなかった。

 

 遠のく意識の中で、俺は夢を見ていた。

目の前には懐かしい光景が広がっていた。

そこは昔俺が通っていた中学の屋上だった。

その日はぽかぽかといい天気だった。

吹奏楽部の練習する演奏が音楽室から微かに聞こえていた。

屋上には俺以外誰の姿も無かった。

俺は誰もいない屋上の片隅でエロ本を傍らにマスをかいていた。

エロ本には人気の女優が足を大胆に広げ、陰毛をたっぷり茂らせたヴァギナを公開していた。

俺はその女優の体を見ながら大好きなクラスメート トモコを頭の中で思い描いていた。

トモコは当時俺が片想いしていた女だった。

成績優秀でスポーツ万能で、誰からも好かれ、サッカー部の部長と付き合っていた。

トモコは俺には高嶺の花で憧れの存在だった。

今の俺にできることはせいぜいトモコの妄想に明け暮れオナニーすることぐらいだった。

俺はペニスを激しくシゴキ、エロ本の上にたっぷりと真っ白な精子を放出した。

俺はペニスを出したままその場に大の字に仰向けに寝転んだ。

俺が射精後のひと時を堪能していた時、微かな物音と人の気配に俺は気づき、思わず起き上がり振り返った。

 次の瞬間、俺は凍りついた。

目の前にトモコが信じられないというような表情で立ち尽くしていたのだった。

俺が思わず立ち上がろうとした時、トモコは顔を真っ赤にして屋上から立ち去ってしまった。

一人屋上に取り残された俺は空しさと恥ずかしさに苛まれていた。

 その後、俺は何度かトモコの誤解を解こうと試みたが、勇気が出せず一度も話さないまま卒業してしまった。

トモコとはそれっきり会っていなかった。

 それは俺の心の中でトラウマとなって今まで眠っていたおぞましい記憶だった。

次の瞬間、俺は見知らぬ女を激しくレイプしていた。

俺が女をレイプしている下には数え切れないほどの女たちが裸体で寝そべっていた。

その女たちは全員俺が犯した女たちで、俺は無制限で女を犯し続けていた。

俺の体は汗や精子が混ざり合った体液でベットリとし、異臭を放っていた。

俺のペニスは擦り切れ、真っ赤に染まっていた。

それでも俺は女を犯すことを止めなかった。

いや、止めることができなかった。

一人の女が終わると、また別の女が現れ、俺は犯し続けた。

ついに俺のペニスは破裂するように粉々に砕け散ってしまった。

俺は自分の血とペニスの肉片をかぶりながら、それでも腰を動かし続けていた。

すでにそれは快楽を通り越し、苦痛へと変わっていた。

発情したウサギのオスは自分のペニスが擦り切れても交尾を続けるという話をどこかで聞いたことがある。

今の俺はまさにオスウサギ同然の鬼畜だった。

俺の脳裏に現れるのは中学二年の夏にオナニーを見られたトモコのことだった。

あの時のトラウマが今でも俺を支配していた。

俺はその忌まわしい過去を心の中に封印し、忘れようとしていた。

あれがきっかけで俺は女とまともにセックスができなくなってしまったのだ。

しかし、俺は再びその記憶を思い出し死にたくなった。

俺の未来には真っ暗な闇しかなかった。

その時、闇の中を一筋の光が照らした。

そして俺の前にマユミが現れた。

マユミは何も言わずにただ微笑んでいた。

俺がマユミに手を伸ばすと、マユミは俺の握り、やさしく微笑みかけた。

「いいの、あなたはそのままでいいのよ」

その瞬間、俺は救われたような気がした。

マユミの一言で俺は死ぬのを止めた。

そして、闇の中を照らす一筋の光に導かれるままに俺は歩み続けた。

 あんなに苦しんでいた〝デザイア〟がついに動かなくなった。

あまりの苦痛のあまり息絶えたのか?

タツオとタツヒコはゆっくりと〝デザイア〟に近づいた。

ついに〝デザイア〟を倒した。

これで仲間たちに威張り散らすことができる。

鬼頭にも一目おかれるだろう。

タツオはこの場で〝デザイア〟のサングラスを外そうと思った。

タツオがサングラスに触れようとした時、突然、〝デザイア〟が立ち上がり、瞬時に二人を殴り倒した。

〝デザイア〟は口をモゴモゴさせ、何かを吐き出した。

土の上に吐き出されたそれはタツオが飲ませたおぞましい害虫の死骸だった。

〝デザイアは〟変な呼吸を繰り返したまま倒れた二人に襲い掛かってきた。

〝デザイア〟は急所だけを狙い、確実に二人を殺そうとしていた。

その攻撃はまさに野生の獣のようで、タツオとタツヒコは二人がかりでも手も足もでなかた。

散々、二人を殴り、蹴り、暴れまわった挙句、〝デザイア〟はギンギンに膨れ上がったペニスを抜き、タツオのアヌスに突っ込み、犯し始めた。

 タツオは必死に抵抗したが、〝デザイア〟は止まらなかった。

タツヒコはその様子を見て動くことができなかった。

今まで様々な悪事を働いてきた二人だったが、男に犯されたことはなかった。

しかも目の前にいる男はまるで鬼のようで、とても人間とは思えなかった。

ついにタツオは泡を吹き、白目をむいて意識を失った。

そして、ペニスをタツオのアヌスから抜くと、まだ体液に塗れている勃起したままの生のペニスをタツヒコのアヌスにぶち込んだ。

生まれて初めてタツヒコは一人の人間に恐怖を感じた。

〝デザイア〟は激しく腰を動かし、アヌスの奥を突きまくっている。

タツヒコは犯される女の気持ちを実感した。

それは悔しさと、怒りと、切なさと、悲しさがぐちゃぐちゃに入り混じったような感覚だった。

そして、全てがどうでもよくなった。

だんだんと意識が遠くなっていく。

やがて、〝デザイア〟は絶頂し、タツヒコのアヌスの中にザーメンをぶちまけた。

その瞬間、タツヒコも口から泡を吹き意識を失った。

                                                     【続く】

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