デザイアと呼ばれた男 VOL 24
こんにちは。D・二プルです。
皆さん、GWどうお過ごしですか?
「デザイアと呼ばれた男」もいよいよデンジャラスな展開へと発展してきました。
この先、どんなイカレタ結末が待っているのでしょうか?
では、続きを御覧下さい。
7
メイン画面で〝デザイア〟と獣姦兄弟との戦いを見ていた國無は思わず息を飲んだ。
またしても予想外の展開になった。
害虫を飲まされた時点で〝デザイア〟に勝ち目はないはずだった。
あの蟲に体内から侵食され、精神障害を引き起こし、発狂し自殺してもおかしくない状態だった。
それがどうだ、この結果は?
あの蟲を吐き出した直後、〝デザイア〟は意識が飛んだままの状態であの二人をぶちのめし、再起不能の状態においこんだ。
さすがの獣姦兄弟もまさか自分が男に犯されるとは夢にも思っていなかったはずだ。
それは二人の人生の中でも初めての経験だった。
メイン画面には二人を犯し終えた凛一郎が朦朧とした状態でペニスを露出したまま呆然と立ち尽くしている。
恐らくまだ意識が完全に戻っていないんだろう。
凛一郎は無意識の状態であの兄弟に勝ったことになる。
國無はどうしても腑に落ちない点があった。
この戦いは今までの戦いとは何かが違った。
タツオとタツヒコと戦ったことで凛一郎はイブとの戦いで初めての殺人を犯した以上の〝何か〟を手に入れた。
それが果たして何だったのか?
國無は自分の膨れ上がる好奇心を押さえられなかった。
凛一郎の過去はこれまでにも散々調べてきたが、國無自身がまだ知らない情報が残されている。
この戦いでそのヒントがまさに隠されているように國無には思えた。
以前、隣の部屋で凛一郎の潜在意識の奥を特殊な機器を使って調べて見たことを國無は思い出していた。
あの時、データには出てこなかったが凛一郎のトラウマが今の凛一郎に大きな影響を与えていることが分かった。
それが何なのか調べることでこの先の展開が大きく左右するかもしれない。
國無はサブ画面の一つに今まで録画していた〝デザイア〟と獣姦兄弟との戦いを巻き戻し、再度チェックした。
エナリを殺害した直後、タツオ、タツヒコが現れ〝デザイア〟に襲いかかった。
前半の攻防は何の問題もない。
問題はやはりあの害虫を飲まされてからの凛一郎の変化だ。
國無は画面を早送りした。
タツオが凛一郎の口の中に害虫を放り込み、派手な合わせ技で凛一郎を地面に叩きつけた所で再生した。
害虫を飲まされた凛一郎は激しく苦しみ、痙攣を繰り返し、発狂寸前の状態で地面をのた打ち回っている。
恐らく幻覚を見ているのだろう。
國無は凛一郎がどんな幻覚を見ているのか死ぬほど気になった。
この状態の凛一郎の脳波を調べることができていればもっと詳しく知ることができたのに……國無は思わず、テーブルを拳で叩きつけた。
画面の凛一郎はまだ痙攣しながらのた打ち回っている。
よほど苦しいのだろう。
あの状態でよく精神障害を引き起こさなかったのが不思議なぐらいだ。
國無は改めて凛一郎の精神の強さを実感した。
さすがに選びに選び抜いた主人公だ。
凛一郎は類まれない精神力の強さと限りなくデカイ欲望を抱えていた。
それはまさに稀に見る貴重な人材だった。
画面上の凛一郎が動かなくなった。
さっきはこの時点で凛一郎は終わりだと國無は思った。
しかし、ここからが予想外の展開だった。
國無は画面に集中した。
害虫を口から吐き出した凛一郎は人が変わったような豹変振りを発揮した。
この時点であの害虫の毒に打ち勝ったことになる。
あの蟲が与える〝苦痛〟がそれまで眠っていた凛一郎の力を覚醒させたのだ。
凛一郎は意識を失ったままタツオを犯し終え、恐怖に打ちのめされたタツヒコを犯している最中だった。
その時、國無は凛一郎の口元に注目した。
タツヒコを犯しながら凛一郎は何かを口走っているようなのだ。
恐らく無意識で独り言を繰り返しているのだろう。
それはまさに凛一郎の潜在意識の奥に潜むヒントが隠されている可能性が高かった。
しかし、音声は聞き取れない。
國無は画面上の凛一郎の口元をアップで映し出した。
そして、音量をMAXにした。
それでも雑音がひどくて凛一郎の言葉は拾えなかった。
國無はアップになった凛一郎の唇の動きを読んだ。
……ト・モ・コ……
唇の動きからはそう読み取れた。
トモコ?
それは初めて聞いた國無も知らない名前だった。
トモコとは誰だ?
しかし、それが誰であろうとこの状態で凛一郎の口から出てきたということは最重要人物であることは間違いなかった。
こいつは思わぬ展開になってきた。
凛一郎のことは全て知らなければならない。
今、この場で凛一郎を見殺しにするわけにはいかなくなった。
國無は一瞬考えた。
計画変更だ。
さあ、どうしたものか?
國無は慌ててダンボールの中から一台の携帯を取り出し、電話を掛けた。
「おい、今どこにいる?……よし、仕事だ。…………そうだ、今すぐ準備しろ。とにかく今から言う場所に行って俺の言う通り動け。……ああ、そうだ。契約は忘れてないな。……よし、とにかくうまくやれよ。お前の動きはいつもチェックしているからな。失敗すればお前の欲望も適わなくなるぞ」
そう言って國無は携帯を切ると水槽の中に投げ入れて、慌てて外に飛び出した。
中庭に出ると朦朧とした状態の凛一郎が今にも倒れそうにフラフラしながら立っていた。
國無は凛一郎を抱きかかえ、声をかける。
「凛一郎、オレだ分かるか?」
「……おっさん、マユミは……マユミはどうした?」
「マユミのことは心配するな。オレに任せておけ。それより今はお前の安全の方が先だ。さあ、来い。中に入るんだ」
國無は凛一郎を抱きかかえたまま、今までモニターで鑑賞していた隣のいつもの部屋に連れて行き、ソファーに凛一郎を寝かせた。
國無は慌てて、棚から脳波を読み込む装置を埋め込んだ枕を凛一郎の頭の下に置き、コードを伸ばし、ノートパソコンにセットした。
國無はもう一度、凛一郎の潜在意識の奥に隠された〝トモコ〟の謎を脳波から読み取ろうとしていたのだった。
凛一郎は安心したように意識を失った。
國無は凛一郎の寝顔を見ると部屋を出て外から鍵を掛け、急いで隣の部屋に移動した。
さあ、これからが忙しくなるぞ。
まずは邪魔者を消さなければならない。
それから駒の移動と新たな欲望を生み出さなければならない。
やることはてんこ盛りだった。
しかし、國無はこの予想外の大波乱を大いに楽しんでいた。
8
鬼頭は國無の忠告に従い、廃屋団地の裏手に来ていた。
イブの死体を見た鬼頭は精神的にかなり追い込まれていた。
〝デザイア〟はハッタリでもなく、現実にイブを殺していた。
それは〝デザイア〟が人を殺すだけの度胸と力を持っていることが証明された。
これはうかうかしてはいられない。
一般人に追い込みをかけるのとはまるでわけが違う。
9人の仲間を呼び寄せた時、鬼頭はすでに〝デザイア〟と戦争するつもりでいた。
しかし、それは初めから〝勝利〟を予想してのことで、まさかあのメンバーが〝デザイア〟に殺されるとは夢にも思っていなかった。
鬼頭の中で〝デザイア〟の存在がなんとしても今のうちに殺しておかなければならない敵となった。
しかし、頭の中で自分と〝デザイア〟の死闘を思い浮かべて見ても、最後に自分が立っている姿が想像できなかった。
これまで鬼頭は自分が負ける姿を想像したことはなかった。
イブやエナリたちと戦った時も、苦戦はしたものの決して負けるとは思わなかった。
しかし、〝デザイア〟にはそれ以上の未知なる恐怖を感じていた。
電話の男の言うことを聞き、ここまでやってきたがもうすぐ〝デザイア〟と対峙することになるだろう。
その時、突然鳴り出した携帯の着信音に鬼頭はハッとなって携帯を取った。
「おい、お前の目の前にワンボックスカーが見えるはずだ。前の右のタイヤの下にキーが置いてある。その車でジョーの隠れ家に行くんだ。そこに奴がいる」
それだけ言うと國無は電話を切った。
鬼頭は目の前に停まっていたワンボックスカーのタイヤの下からキーを取り、ドアを開け、車の中に乗り込んだ。
運転席に座り、車を発進させようとした鬼頭は後部座席に人の気配を感じ振り返った。
そこには寝息を立てて眠るマユミがいた。
一瞬、鬼頭はギョッとなったが、すぐに心を落ち着かせ、頭の中で思考を巡らせた。
この電話の男が言っていた〝勝利の女神〟か?
この女は確か「ワールド」の従業員で何度か顔を合わせている。
そう言えば以前にもどこかで会ったことがあるような気もするが……今は思い出せなかった。
とにかく、今はそんなことを考えている時じゃない。
鬼頭はキーを回し、エンジンをかけ車を走らせた。
目的地はジョーのアジトだ。
そこで待ち受けている悲劇の舞台を鬼頭は知る由もなかった。
後部座席で眠るマユミは夢を見ていた。
真っ暗な中でマユミは得体の知れない何者かに追いかけられていた。
それが誰なのかマユミには分からなかった。
ただ恐怖だけが着いてきた。
逃げても逃げても振り払えない恐怖。
追ってくる者の足音が次第に近づいてくる。
獣のように荒い吐息が耳元にこだましている。
次の瞬間、マユミは心臓が止まりそうになった。
闇の中から触手のように伸びてきた腕がマユミの肩を掴んだ。
マユミが振り返るとそこには〝デザイア〟の姿があった。
マユミが一瞬ほっとした瞬間、〝デザイア〟がドロドロに溶け出し、白骨死体に変貌した。
マユミは叫び声を上げ、起き上がった。
目の前には車を運転する鬼頭の姿があった。
マユミはこの状況がまるで理解できなかった。
ジョーの家でSMプレーをしていたはずが、気が付くと走っている車の中で目の前には鬼頭がいる。
まるで意味が分からなかった。
いつの間にか服も着ていた。
それは初めて見る服だった。
黒のキャミソールとデニムのハーフパンツ。
しかも、サイズはぴったり合っている。
マユミと顔を合わせた鬼頭はすぐに視線を前に戻し、無言のまま運転を続けている。
マユミは自分が鬼頭にさらわれたのかと思った。
しかし、今まで見ていた背筋が凍りつくほどの悪夢を見ていたおかげで、現実に起きているこの状況がまるで怖くなかった。
マユミは後部座席の背もたれに体を預け、ゆっくりと流れに身を任せた。
一方、廃屋団では鬼頭と同じように謎の男からの電話によって呼び寄せられたシローとジャックが顔を見合わせ、その場に立ち尽くしていた。
シローとジャックの足元には白目を向き泡を吐いて気絶しているタツオとタツヒコ、そして、首に絞められた痕がまだはっきりと残って息絶えているエナリの姿が無残に横たわっていた。
「一体どうなってんだ?三人もいて〝デザイア〟一人にやられたのか?」
「その〝デザイア〟はどこにいったんだ?三人を殺って逃げたのか?」
「お前も電話でここに呼び出されたんだろ?あの電話を掛けてきた男が〝デザイア〟だったんじゃないか?」
「これは罠か?」
その時、二人は背後に気配を感じ振り返った。
そこにはサングラスに黒のニット帽を被り、全身黒尽くめの男が立っていた。
「お前が〝デザイア〟か?」
「……そうだ」
ジャックの問いに答えた〝もう一人のデザイア〟は、即座に懐からサイレンサー付の銃を抜き、ジャックに向けて発射した。
弾丸はジャックの心臓付近を貫通し、ジャックは音を立てて地面に倒れこんだ。
突然の出来事に事態を飲み込めないシローに向けて〝もう一人のデザイア〟は容赦なく銃を撃ち放った。
首筋を撃たれたシローは首から流れ出る自分の血を左手で押さえながら、ジャックの隣にゆっくりと崩れ落ちた。
〝もう一人のデザイア〟はゆっくりと倒れているシローたちに近づいて行き、一人ひとりにとどめの銃弾を喰らわせた。
男はすでに死んでいるエナリの額をも撃ち抜き、不適な笑みを見せた。
まるでゲームでも楽しむように一瞬で四人の男を殺害したその男は携帯を取り出し電話を掛け始めた。
「終わったぜ。全部片付いた。あんたの言うとおり5体の死体が出たぜ」
「分かった。死体はそのままでいいからお前は残りの任務を完了しろ」
任務の報告を終えた男は茂みの中からハシゴを取り出し、踊り場にハシゴを掛け真っ暗な団地内に入って行った。
ペンライトをかざしながら階段を上っていった男は、鍵を開け、ソファーで寝ている凛一郎の前に立ちはだかった。
「こいつが凛一郎か……」
凛一郎は自分の前に見知らぬ男がいることなどまったく気づかず眠っている。
〝もう一人のデザイア〟は凛一郎の腕にある液体の入った注射を打ち込んだ。
これは全て國無からの指示だった。
男は注射をゴミ箱に投げ捨てると凛一郎を担ぎ上げ、部屋から出て行った。
【続く】
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